ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
少しすると、注文した料理がロボットくんによって運ばれて来た。それを2人がテーブルの上に乗せ、凪咲がボタンを押すと


「アリガトウゴザイマス。」


という言葉を残して、ロボットくんは去って行く。その様子をなんとはなしに見ていた2人だったが


「じゃ、冷めないうちにいただこうか。」


「はい。」


ふと我に返ったように凪咲が声を掛け、2人はフォークとナイフを手に取った。


「私がAOYAMAさんにお世話になることになった頃は、受付嬢は4名いたんだよ。」


「えっ、そうだったんですか?」


「当時は土曜日もブース開けてたし、メンバ-は全員正社員だった。だけど、たまたまそのうち2人の寿退社が重なってしまって、その穴埋めとして、初めて派遣が2人採用されたんだ。一緒に入ったのは私より年下の子だったんだけど、合わなくって半年くらいで辞めてしまって、それからは3人体制になって、現在に至ってるんだよ。」


「へぇ。」


「だから、AOYAMAのブ-スにも少しずつリストラの波が押し寄せて来てるのは、確かなことなんだよ。」


そう言った凪咲に


「でも土曜日開けてたからとは言え、もともと4人は多すぎたと思いますし、派遣さんの導入は別にブースだけじゃなく、他の部署でも普通に行われてることですから・・・。今のウチの会社でブースを廃止するなんて、どう考えても絶対に現実的じゃないですよ。」


千晶は首を振る。


「そっか、やっぱり考えすぎ、かな?」


「はい。」


頷いた千晶の笑顔につられて、笑顔になった凪咲は、気を取り直してフォークを口に運んだ。


それから・・・次の日も、その次の日も、AOYAMAのブースはある時は慌ただしく、ある時は穏やかに時が流れて行った。


「いらっしゃいませ、本日はご苦労様でございます。」


来客を迎える凪咲の笑顔は今日も眩いばかりだ。その横で、千晶もまたにこやかな表情で、応対している。あの日以降、千晶はブースの仕事に、真摯に勤しむようになった。


(千晶ちゃんの中で、何か吹っ切れたのかもしれない。よかったな・・・。)


そんな千晶の様子に、凪咲はホッとした思いを抱くと同時に、彼女をフォロ-し、応援して行こうと改めて感じていた。


そして、その日の勤務が終わり、更衣室で凪咲が着換えていると


「じゃ、凪咲さん。私、これから例の合コン、行ってきます。」


千晶が弾んだ声で言って来た。


「そっか、無事開催なんだね。私のせいでポシャってなくてよかった。」


ホッとした声で答えた凪咲に


「はい、イケメンゲットして来ます。じゃ、お先で~す。」


そう言って、軽やかな足取りで、更衣室を後にした千晶を


(頑張ってね、千晶ちゃん。)


凪咲は微笑ましい気持ちで見送った。
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