ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
凪咲は、そのまま地下の社員食堂へ。AOYAMAの社食は値段の割には、美味しく、メニュ-も豊富だと社員からも評判が高い。凪咲にとっても、仕事の合間の楽しみで、お目当てのメニュ-をトレイに乗せると、いそいそと席に着く。


「いただきます。」


職務柄、同僚と連れ立っての昼食というシチュエ-ションがほとんどない凪咲は、1人で食事をすることが多いが、そんなことが気にならないくらい美味しい食事に思わず笑顔になる。


だが、大所帯である総合商社の昼食時の社食は、人で溢れんばかりだ。関連会社を含む社員はもちろん、多少割高料金にはなるが、来訪者にも開放されているからだ。いつまでも席を占領しているわけにもいかず、食事を終えると凪咲は早々に席を立つ。食堂を出ると、今度はエレベ-タ-で一気に最上階・屋上へ。ここは社員の休憩スペ-スになっており、思い思いのひと時を過ごす。


やがて時間になり、更衣室に戻って、化粧を整え直し、身だしなみを再確認すると


「よし。」


と気合を入れ直すと、またエントランスへ降りて行く。


凪咲が戻ると、12時台の穏やかさがウソのように、ブースはまた慌ただしくなっている。時期や曜日によっても多少の違いはあるが、13時を過ぎると来客の第2ピークタイムに入っているからだ。


「戻りました。」


と手短に挨拶した凪咲は、休憩に入る千晶に代わって、素早く所定の位置に着く。すると、すぐに来訪者が彼女の前に立つから


「いらっしゃいませ、本日はご苦労様でございます。」


にこやかな笑顔を浮かべ、来客を迎える。


その波が落ち着いて来るのが、だいたい15時過ぎ。でも来客のピ-クは超えても、受付嬢にも事務仕事がある。会議室の予約入力などは、ダブルブッキングを防ぐ為にも、随時行っているが、他にも本日の来訪者の記録入力や日報の作成といった業務があり、戻って来た千晶も交え、3人はそちらに取り掛かる。


それらが一段落すると、ブース周りの片付けや使用された会議室の清掃、整理といったクロ-ズ作業に入る。とは言っても、来客者が全くなくなるわけではなく、また外出していた社員の帰社もあるので、ブースを空にすることは出来ないのは当然のことだ。
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