ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
その後ろ姿を、なんとも言えない表情で見ている凪咲に気付いた貴恵が
「どうかしたの?菱見さん。」
心配そうな表情で尋ねるが
「いえ、なんでもありません。」
ぎこちない笑顔で答えた凪咲は結局、心、ここに非ずといった風情のまま家路に着いた。歩きながらも、電車に乗ってからも、部屋に帰り着いたあとも、心は千々に乱れ、混乱と動揺の極みの中にいた。今日起こった出来事が、未だに信じられない思いでいっぱいだったのだ。
(裕・・・。)
それは全く予期せぬ再会だった。出来るならもう1度会いたい。3年前、突然彼が自分の前から姿を消した、あの日から今日まで、そう願い続けて来たのだ。本来なら、その再会を喜ぶべきなはずなのに、しかし、今の凪咲の心の中を占めているのは驚きであり、もう1つは違和感だった。
(今日、会ったあの人は、本当に私の好きだった、あの裕なの・・・?)
顔を見忘れるはずもない。だから、疑う余地など全くないはずなのに、凪咲はその思いを拭い去れない。だからこそ、混乱しているのだ。
(あの人は、私の顔を見ても、なんの反応も示さなかった。まさか私のこと、忘れちゃったわけじゃ・・・ううん、そんなことは絶対にない。だとしたら、苗字も違うし、やっぱり他人の空似なのかも・・・。)
夕飯を食べるのも忘れて、とりとめのないことを考え続ける凪咲の耳に、やがてインタ-フォンの音が響いた。ハッとして、時計に目をやれば、既に21時を過ぎている。
(誰?こんな時間に・・・。)
と思いながら、インタ-フォンの画面に目を移した凪咲は固まった。
(裕・・・。)
映っていたのは、まぎれもない、新城裕その人だったのだ。思わず応答するのを躊躇っていると
「いるんだろ?凪咲。」
向こうから呼び掛けて来るその声。「凪咲」と呼び掛けて来た、その声のトーンには心地好い、既視感ならぬ「既聴感」を覚えて
「はい。」
と思わず返事をしてしまうと
「話がある。開けてくれないか?」
裕は呼び掛けて来る。
「こんな時間に、急に来られても、困ります」
と拒絶して見せた凪咲だったが
「時間は取らせない。だから頼む。」
そう言って、頭を下げている裕の姿を見ると、少し躊躇ったあと、決心したように、扉を開いた。
「凪咲、久しぶり。」
すると、満面の笑顔で呼び掛けて来る裕。髪型や雰囲気は変わっていても、その笑顔を見た瞬間
(やっぱり、裕だ・・・。)
凪咲は確信していた。
「どうかしたの?菱見さん。」
心配そうな表情で尋ねるが
「いえ、なんでもありません。」
ぎこちない笑顔で答えた凪咲は結局、心、ここに非ずといった風情のまま家路に着いた。歩きながらも、電車に乗ってからも、部屋に帰り着いたあとも、心は千々に乱れ、混乱と動揺の極みの中にいた。今日起こった出来事が、未だに信じられない思いでいっぱいだったのだ。
(裕・・・。)
それは全く予期せぬ再会だった。出来るならもう1度会いたい。3年前、突然彼が自分の前から姿を消した、あの日から今日まで、そう願い続けて来たのだ。本来なら、その再会を喜ぶべきなはずなのに、しかし、今の凪咲の心の中を占めているのは驚きであり、もう1つは違和感だった。
(今日、会ったあの人は、本当に私の好きだった、あの裕なの・・・?)
顔を見忘れるはずもない。だから、疑う余地など全くないはずなのに、凪咲はその思いを拭い去れない。だからこそ、混乱しているのだ。
(あの人は、私の顔を見ても、なんの反応も示さなかった。まさか私のこと、忘れちゃったわけじゃ・・・ううん、そんなことは絶対にない。だとしたら、苗字も違うし、やっぱり他人の空似なのかも・・・。)
夕飯を食べるのも忘れて、とりとめのないことを考え続ける凪咲の耳に、やがてインタ-フォンの音が響いた。ハッとして、時計に目をやれば、既に21時を過ぎている。
(誰?こんな時間に・・・。)
と思いながら、インタ-フォンの画面に目を移した凪咲は固まった。
(裕・・・。)
映っていたのは、まぎれもない、新城裕その人だったのだ。思わず応答するのを躊躇っていると
「いるんだろ?凪咲。」
向こうから呼び掛けて来るその声。「凪咲」と呼び掛けて来た、その声のトーンには心地好い、既視感ならぬ「既聴感」を覚えて
「はい。」
と思わず返事をしてしまうと
「話がある。開けてくれないか?」
裕は呼び掛けて来る。
「こんな時間に、急に来られても、困ります」
と拒絶して見せた凪咲だったが
「時間は取らせない。だから頼む。」
そう言って、頭を下げている裕の姿を見ると、少し躊躇ったあと、決心したように、扉を開いた。
「凪咲、久しぶり。」
すると、満面の笑顔で呼び掛けて来る裕。髪型や雰囲気は変わっていても、その笑顔を見た瞬間
(やっぱり、裕だ・・・。)
凪咲は確信していた。