ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
⑥
高校卒業と同時に地元を離れ、東京の大学に進学した凪咲はそのまま地元には戻らずに就職。就職先の『大塚ケミカルズ』は、化成品、樹脂などの石油化学製品と情報・電子製品、更には製薬等のヘルスケア商品や自動車関連の部品の開発、製造、販売を行っている会社だった。
営業事務に配属された凪咲は、多岐に渡る扱い商品に戸惑いながらも、優しい先輩たちに指導を受け、気の合う同期生たちと仲睦まじく、時に競い合いながら、充実した日々を過ごして行くうちに、あっという間に2年半の月日が過ぎようとしている頃。凪咲は、唐突に実家に呼び出され、週末を利用して帰郷した。
「ただいま。」
実家に着いて、玄関に入ると
「お帰り。」
と出迎えてくれたのは、3歳年上の兄、勉だった。
「あれ、おにいも帰ってたんだ?」
凪咲と同じように高校卒業後、東京の大学に進学した勉は、しかし妹と違って、卒業後は地元に戻り、信用金庫に就職していたが、勤務地の関係で、実家からは離れていた。
「うん。なんか大事な話があるから、帰って来いって。」
「そうなんだ。おにいまで呼ばれるなんて、何事なんだろうね?」
「さぁ?とりあえず上がれよ。」
こうして兄妹揃って、居間に向かうと、父直也と母正美が並んで待っていた。
「ただいま、お父さん、お母さん。」
「お帰り、急に悪かったわね。」
「ううん、そんなのは大丈夫だけど、一体どうしたの?」
母に尋ねた凪咲に
「とりあえず、そこに座りなさい。」
父が告げ、頷いた凪咲は、兄と共に両親の前に座るが、ただならぬ様子の両親に、内心首を捻っていると
「凪咲。」
「はい。」
「急な話だが、明日お前にお見合いをしてもらう。」
父は全く予想外のことを告げて来た。
「え、えぇ~。」
さすがに驚きの大きな声を上げざるを得なかった凪咲の横で
「ちょっと父さん、いきなりなに言い出すんだよ。そんな冗談言う為に、俺たちを呼んだのかよ?」
勉も戸惑いながら言ったが
「冗談ではない。」
と表情を崩さずに答えられ、兄妹は固まってしまう。そんな子供たちに構わず
「お相手は『旅館鳳凰』の跡取り息子の廣田耕司くんだ。凪咲は確か、彼とは高校が一緒だったな。」
直也は話を続ける。
営業事務に配属された凪咲は、多岐に渡る扱い商品に戸惑いながらも、優しい先輩たちに指導を受け、気の合う同期生たちと仲睦まじく、時に競い合いながら、充実した日々を過ごして行くうちに、あっという間に2年半の月日が過ぎようとしている頃。凪咲は、唐突に実家に呼び出され、週末を利用して帰郷した。
「ただいま。」
実家に着いて、玄関に入ると
「お帰り。」
と出迎えてくれたのは、3歳年上の兄、勉だった。
「あれ、おにいも帰ってたんだ?」
凪咲と同じように高校卒業後、東京の大学に進学した勉は、しかし妹と違って、卒業後は地元に戻り、信用金庫に就職していたが、勤務地の関係で、実家からは離れていた。
「うん。なんか大事な話があるから、帰って来いって。」
「そうなんだ。おにいまで呼ばれるなんて、何事なんだろうね?」
「さぁ?とりあえず上がれよ。」
こうして兄妹揃って、居間に向かうと、父直也と母正美が並んで待っていた。
「ただいま、お父さん、お母さん。」
「お帰り、急に悪かったわね。」
「ううん、そんなのは大丈夫だけど、一体どうしたの?」
母に尋ねた凪咲に
「とりあえず、そこに座りなさい。」
父が告げ、頷いた凪咲は、兄と共に両親の前に座るが、ただならぬ様子の両親に、内心首を捻っていると
「凪咲。」
「はい。」
「急な話だが、明日お前にお見合いをしてもらう。」
父は全く予想外のことを告げて来た。
「え、えぇ~。」
さすがに驚きの大きな声を上げざるを得なかった凪咲の横で
「ちょっと父さん、いきなりなに言い出すんだよ。そんな冗談言う為に、俺たちを呼んだのかよ?」
勉も戸惑いながら言ったが
「冗談ではない。」
と表情を崩さずに答えられ、兄妹は固まってしまう。そんな子供たちに構わず
「お相手は『旅館鳳凰』の跡取り息子の廣田耕司くんだ。凪咲は確か、彼とは高校が一緒だったな。」
直也は話を続ける。