ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「まさか25歳が行き遅れとか言うんじゃないよな?まぁ行き遅れという言葉自体も問題なんだけど、父さんのカラオケの十八番である『22歳の別れ』なんて歌が、世間に何の抵抗も疑問もなく受け入れられて、ヒット曲になってた時代とは、今は違うんだぜ。そんな価値感を押し付けられたら、凪咲が可哀想だよ。」


両親を嗜めるような勉の言葉だが


「行き遅れとは言わんが、女の25歳は、決して結婚に早すぎる齢じゃない。」


それを突っぱねるように直也は言う。


「だから、『女の』とか言うと、余計ややこしいことになるんだって。だいたい今の時代、結婚は人生に必須じゃないっていう考え方の人も珍しくないんだぜ。」


「お前もそうなのか?」


「俺は付き合ってる彼女がいるし、彼女といずれは・・・とは思ってるけど、でも絶対にしなきゃならないとも思ってないよ。」


その息子の言葉に、ややショックを受けたような表情を浮かべた直也の横で


「でも私はやっぱりあんたたちにちゃんと結婚して、家庭を持ってもらいたいし、孫の顔だって見たいからね。」


今度は正美がそんなことを言い出す。


「その母さんの気持ちは、わからないではないけど、だと言って、本人の意思をまるっきり無視して、凪咲にその思いを押し付けるのは、どう考えたっておかしいだろう。」


妹の為に抗弁する勉だが


「ありがとう、おにい。もういいよ。」


そんな兄を制するように凪咲は言う。


「凪咲・・・。」


驚いたように自分を見る勉に1つ頷いて見せた凪咲は


「さっきお父さんは、私が自分で、将来を共に歩むパートナ-を見つけて来るなら、その時はその意思を尊重しようと思っていたって言ったよね。」


確認するように言った。


「ああ。」


「だったら、この話はもう終わりだよ。」


「凪咲?」


「報告してなかったけど、私、今、結婚も視野に入れて、ちゃんとお付き合いしてる人がいるの。」


「えっ、そうなの?」


驚きの声を上げた正美に、一瞬動揺した表情を浮かべた凪咲だったが


「そ、そういうことなんで。だから私、この話は絶対に受けないし、だから廣田くんにはお目に掛からない。そんな廣田くんにも私の彼にも失礼なことは出来ないよ。」


すぐにそう言い切った。そして


「ということで、後はお父さんが、キチンと後始末してよね。それじゃ。」


思わぬ娘のカミングアウトに、言葉を失っている父を尻目に立ち上がった。
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