ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
結局、その日の夜、同期何人かに呑みに連行された凪咲は、全てを話さなければならなくなった。


「へぇ、凪咲って、実はお嬢様だったんだ。」


「なんで?」


「今どき、そんなお見合いの話が来るなんて、地方の名士の家柄なんじゃない。」


「とんでもない、ただの一地方都市の肉屋の娘です・・・。」


目を輝かせて尋ねて来る同僚に、凪咲はため息交じりに答える。


「じゃ、これを機会に彼氏作ればいいじゃん。合コン、セッティングしようか?」


「話聞いてた?もう今週末にでも連れて来いって言われてるんだよ。」


「となると・・・やっぱり同期の男子の誰かにでも、偽彼氏役頼むしかないでしょ。」


「そうだよね・・・誰か焼肉3回で引き受けてくれないかな?」


という凪咲の言葉に


「それ、いくら何でも報酬安くない?」


「そうだよ。だって結婚前提の彼氏役でしょ?万一ばれたら、結構ややこしいことになりそうだし、みんな尻込みすると思うよ。」


とたちまちツッコミが入る。


「確かに・・・。」


「だったらさ、どうせ報酬払うんだったら、いっそ恋人代行サービス頼んだら?」


「えっ?」


「そっか、レンタル彼氏か。」


「レンタル彼氏って・・・。」


絶句している凪咲をよそに


「それならバレないかも、なんて言ってもプロだもんね。」


「でも、あれって時給制でしょ?凪咲の地元まで往復したら、交通費もあるから、結構な金額になるよ、きっと。」


「ご両親に気に入られちゃって、『せっかくだから泊まっていきなさい』なんて話になったら、大変だよ。」


「そっかぁ。」


盛り上がってる同僚たちに、結局酒の肴にされ、何らの実りもない時間を過ごしただけに終わった凪咲は、さすがに腹が立ったが


(所詮はみんなにとっては、他人事だもんね・・・。)


そう諦めるしかなかった。


こうして、時間だけが過ぎて行き、親からのプレッシャーは強くなる一方。


(もう無理、こうなったらもうお父さんたちに謝るしかない・・・。)


昼休み、ひとりポツンと昼食を摂りながら、凪咲がついにギブアップを覚悟をした時だった。


「あの、菱見さん。」


やや、躊躇いがちに呼び掛けて来る声が。ハッと顔を上げた凪咲の目に飛び込んで来たのは


大城(おおしろ)くん。」


同期のひとり、大城裕の姿だった。
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