ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
約30分後。実家の応接間で、凪咲は、大城と共に緊張の面持ちで、両親と相対していた。


「それでは、改めまして。この方が、私が現在お付き合いさせていただいてる大城裕さん。会社の同期生で、商品開発の為の研究室に勤務されてます。」


そう口火を切った凪咲に続いて


「大城です。ひ・・・いえ、凪咲さんとは1年ほど前からお付き合いをさせていただいております。もっと早くに、ご挨拶にお伺いすべきところを、遅くなってしまって、申し訳ございませんでした。」


大城はこう言って、難しい顔で自分を見ている凪咲の両親に頭を下げる。


「大城さん、緊張されてますか?」


それに対して、尋ねた直也の語調は、予想外に優しかった。


「はい。」


正直に頷いた大城に


「実は・・・私もです。」


と言って、直也は笑みを浮かべた。


「えっ?」


「娘から突然、付き合っている男性がいるなんて言われて、正直驚きました。とにかく、こっちにいる間はもちろん、親元を離れて、都会でひとり暮らしを始めても、浮いた話なんて、トンと聞こえて来なかったものですから。」


「・・・。」


「まぁ私たちには何も言わなかっただけなのかもしれませんが、たまに帰って来た時の雰囲気で、親にはなんとなくわかるもんなんですよ。いやわかってるつもりだったんですが、こんな話になって。あるいは、私がいきなり見合いの話なんかしたから、反発して、口から出まかせでも言ったのかもと思ってたんですが・・・一本取られました。」


「お父さん・・・。」


穏やかな口調で話す父のその言葉が、実は図星であることに、凪咲は思わず複雑な表情になる。


「大城さん。」


「はい。」


「今少しお話しただけですが、あなたの実直なお人柄は、よくわかりました。」


「ありがとうございます。」


「その上で、改めて確認させていただきます。娘は、大城さんとは将来を誓い合っている、そう申しておりました。それで間違いありませんか?」


「はい。」


直也からの問いに、大城は真っすぐに彼の目を見て答えた。


「そうですか・・・であるなら、私たちは娘が自分で選んだ男性に対して、とやかく申し上げるつもりは毛頭ありません。凪咲は特別、器量良しではないかもしれませんが、どこに出しても恥ずかしくないだけの娘には育ってくれたと思っております。どうか、娘のことをよろしくお願いします。」


そう言って、直也は横の妻と共に、大城に深々を頭を下げた。
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