ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「いや、その・・・。」


「お父さん・・・。」


思わぬ展開に、戸惑いを隠せない大城と凪咲に、直也は身を乗り出すような姿勢で勢い込むように


「つきましては、是非この話を正式に進めていただきたいのです。」


と続けたから、完全に2人は固まってしまう。


「父さん。いくらなんでも、話が急すぎないか?今日は大城くんだって、娘さんと付き合っていますので、よろしくお願いします程度の挨拶のつもりでいらしたんだろうから、この後のことは当人たちに任せるべきじゃないの?」


堪りかねたように勉が割って入るが


「俺は2人の気持ちが固まっていると聞いたから、言ってるんだ。別におかしなことを言っているつもりはない。」


直也は引かない。勉が苦虫を噛み殺したような表情で黙ると


「凪咲。」


今度は正美が娘に呼び掛けた。


「はい。」


「今更だけど、あなたに無断で、鳳凰さんの息子さんとの見合いの話を進めたのは、本当にごめんなさいね。私たちもそのことに罪悪感が全くなかったわけじゃないの。でも正直、私たちは凪咲に早くお嫁に行って欲しかったのよ。」


「お母さん・・・。」


凪咲は思わず、なんでと問い掛けるような視線を母に向けた。


「凪咲は早めに結婚して、家庭に納まった方が向いていると思っていたの。」


「そうなの?」


意外な母の言葉に、驚く凪咲。


「それにお見合いのお話をいただいたのが、他ならぬ鳳凰さんだったっていうのも大きかった。」


「どういうこと?」


「凪咲は覚えていないかもしれないけど、あなたは小さい頃、お父さんが鳳凰さんに肉を納めに行く時、よくねだって一緒に連れて行ってもらってたのよ。そしてあなたが顔を出すと、先代の女将や当時若女将だった今の女将さんが本当によく可愛がって下さってね。そして、ハキハキと大人にも物おじせずに、社交的に振る舞うあなたを見て、この子は絶対にいい女将になれるから、将来はウチに是非預けて欲しいなんて言われてね。その時は凪咲も『うん、私、鳳凰の女将さんになる』なんて、無邪気に答えていたのよ。」


「そうだったっけ・・・?」


首を捻る凪咲に


「まぁ、所詮は遠い昔の戯言のような話よね。」


そう言って、正美は笑った。
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