ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
大城と共に実家を訪れてから、ちょうど1週間後の週末。凪咲は緊張の面持ちで、自室にいた。


(いよいよ、だよね・・・。)


時計に目をやって、1つ息を吐いた凪咲は、次に立ち上がると、既に、何度目かと思いながら、家の中をチェックして回る。


(大丈夫、だよね・・・。)


心の中で、自らに確認した凪咲が、とりあえず椅子に腰を下ろすと、インタ-フォンの音が、部屋に鳴り響く。その音にハッとしたように席を立つと、モニタ-を確認する。そして、そこに映る待ち人の顔を確認すると


「お待ちしてました、今開けます。」


と答えると、ドアに向かう。ドアの前で、また1つ息を吐くと、意を決したように、扉を開いた。


「お疲れ様でした、大城くん。」


固い表情で出迎えた凪咲に


「う、うん・・・じゃ失礼します。」


キャリ-バッグを引き、明らかに外泊態勢の大城が、やはり緊張の面持ちで中に入って来た。


「駅から迷わなかった?ここ、ちょっとわかりにくい場所だから。」


「大丈夫。」


「取り敢えず、座って。今、お茶煎れるから。」


「いや、せっかくだけど、荷物を片しちゃいたいから、さっそく部屋に入らせてもらっていいかな?」


「どうぞどうぞ。一応掃除したつもりだけど、もし汚れてる所があったら言って。」


「大丈夫だよ、お気遣いなく。」


そんなことを言いながら、部屋に入った2人。


「思ったより広いね。」


「そう?」


「この部屋なら、快適に過ごせそうだ。」


「ならよかった。」


ここでようやく笑顔になった2人。


「じゃ、少し中で整理させてもらうからね。菱見さんはもし、用事があるなら、遠慮なく出掛けて。僕が留守番してるから。」


「ううん、なんの予定もないし。それより私も手伝おうか?」


「大丈夫。御覧の通り、大した荷物じゃないし。」


「そうだよね、そのキャリ-バッグ1つで足りるの?って、思っちゃった。」


「当面はね。足りなくなったら、前の部屋に取りに戻るし。あとそれに足りない備品とかは、あとで買い足させてもらうから。差し支えないよね?」


「もちろん。今日から、ここは大城くんの部屋なんだから。傷付けたりとかは困るけど、あとは自由に使って下さい。」


「ありがとう、じゃまた後でね。」


「うん。」


そう言って、凪咲は部屋を出た。
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