ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
(お風呂、入んなきゃ・・・。)


本当はそれすら面倒なのだが、大城が帰って来て、顔を合わせる可能性もあるから、万一身体が匂って、不快な思いでもさせたら嫌だし、彼も入るだろうから、やはり用意して、自分も入った方がいいという結論に達し、凪咲は動き出した。


そして、入浴を終えた凪咲が、リビングに戻った時、時計の針は10時を指していた。今日、目覚めてからちょうど12時間経ったわけだが、大城はまだ帰って来ない。


凪咲は椅子に腰掛けると、またスマホをいじり出したが、やがて時計がら11時を知らせる音が流れると、思わず時計に目をやった。


(遅いな、どこで何してるんだろう・・・?)


さすがに気になって来て、電話してみようと、ボタンに手を掛けたが


(でも、どこで何してようと、何時に帰って来ようと、大城くんの勝手だよね。だいたい、お互いの生活には立ち入らないって、約束なんだから・・・。)


と思い直した凪咲は


(寝よ・・・。)


そのまま、自室に入って行った。


翌日は、前日に比べると少し早く、9時前には目覚めた凪咲だったが、大城の姿はやはり見えず、どうやら昨晩は帰って来なかったようだ。


結局、帰って来たのは夜の10時過ぎ。


「ただいま。菱見さん、起きてたんだ。」


リビングのソファーに座っていた凪咲に、やや意外そうな様子を見せた大城に


「お帰りなさい。2日間、どこ行ってたの?」


やや厳しい表情で凪咲は尋ねる。


「えっ?・・・いや、前の部屋の片付けがまだ終わってなくて。明け渡し期限が迫ってるんで、昨日、今日でけりつけなきゃならなかったから・・・。」


そんな凪咲の様子に戸惑いながら、大城は答える。


「そうだったんだ。じゃ、また向こうに泊まったの?」


「うん。」


「わかった、でもね・・・。」


一瞬、躊躇ったように言葉を切った凪咲は、


「君のプライベ-トに干渉するつもりはもちろんないけど、でも私たち、一応一緒に住んでるんだからさ。帰って来なかったら、やっぱり心配になるよ。だから、これからはそういう時は一応連絡もらえると欲しい、かな。」


遠慮がちにそう言うと、微笑んだ。その笑顔に、ハッとしたような表情を浮かべた大城は


「ごめん・・・。」


と言うと、バツ悪げに俯いた。


「うるさいこと言って、ごめんね。じゃ私、先に休むね。お風呂は沸いてるから、よかったらどうぞ。じゃ、おやすみ。」


「おやすみ。」


そう言って、もう一度、笑顔を浮かべた凪咲は、自室に入って行った。
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