ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
その後、大城は出掛けて行ったが、この日は外泊することなく、日付が変わる少し前に帰宅して来た。


既にベッドに入っていた凪咲は、出迎えることはしなかったが


(ちゃんと帰って来た。)


と、なんとなくホッとしたような気持ちになり、そのまま眠りについた。


翌朝。目を覚ました凪咲がリビングに顔を出すと、既に朝食を終えた大城が、コーヒーを片手に、何やら雑誌に目を通している。


「おはよう、大城くん。相変わらず早いね。」


「あっ、おはよう。いや、昨日も言ったように、最近休みの日でもなんか、寝坊してられないで、7時とか8時とかに目が覚めちゃうんだよ。齢かな?」


「ちょっと止めてよ。私たち、まだ25になるかならないかなんだからさ。」


「はい、はい。ところで朝飯、なんか食べるものある?」


「大丈夫。」


「じゃ、僕は部屋に戻ってるから。ごゆっくり。」


そう言って、大城は立ち上がると自室に引き上げて行き、凪咲は冷蔵庫を開いて、自らの朝食を用意する。


テレビを点け、食事を摂り、後片づけをして、またしばらくボンヤリとテレビを眺めていると


「菱見さんって。」


と言う声が聞こえて来て、ハッとすると、いつの間にか大城が部屋から出て来て、こちらを見ている。慌てて姿勢をただす凪咲に


「ひょっとしたら、インドア派?」


大城は尋ねる。


「えっ、どうして?」


「この2日間、出掛ける様子もないし、多分だけど、先週の休みもどこも出掛けてないよね?」


やや遠慮がちに、大城は言った。


「そ、そんなことないよ。ここ2週はたまたま予定がなかっただけで私、ちゃんと友だちいるから。」


何故かムキになって答える凪咲に


「別にそんなつもりで言ったじゃないんだけど、ごめん・・・。」


大城が謝り、なんとも言えない空気が流れる。


(なんかマズいな、この雰囲気・・・。)


焦った凪咲は


「あのう。」


と声を出すと


「あのさ。」


大城の方も声を上げた。声が重なり、一瞬顔を見合わせたふたりは


「大城くんからどうぞ。」
「菱見さんからどうぞ。」


とこれまたハモってしまい


「これじゃ、ラチ開かないな。」


今度は苦笑い。


「じゃあさ、私の方から言わせてもらうね。とりあえず、一緒に出掛けない?」


凪咲が提案すると


「僕も同じこと、言おうと思ってた。」


大城が表情を明るくして答える。


「ならさ、お昼食べに行って、そのまま少し、散歩しようよ。この辺結構、自然に恵まれてるから、案内するよ。」


「本当?なら、是非よろしく。」


「じゃ、着替えて来ちゃうから、ちょっと待ってて。」


「わかった、慌てなくていいからね。」


「うん、ありがとう。」


笑顔を交わし合うと、凪咲は部屋に戻って行った。
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