ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
2人が家を出たのは、それから30分ほど経ってからだった。


「大城くん、何か食べたいもの、ある?」


「特にないけど、せっかくだから、地元で菱見さんのお勧めの店があったら、そこに行ってみたいな。」


「う~ん。私、あんまりオシャレな店、知らないんだけど、いい?」


「僕は全然、大丈夫。」


「じゃ、行こう。」


そう行って歩き出した2人は、最寄り駅の近くに広がる商店街に足を運んだ。


「ずっと家と会社の往復だったから、気が付かなかったけど、結構賑やかな商店街だね?」


「私たちが帰って来る頃には、だいたいの店が閉まっちゃってるからね。」


そんな話をしながら、歩き進んだふたりは、商店街の中頃あたりで足を止めた。


「ここなんだけど、どうかな?」


凪咲が指差したのは、いわゆる町中華の店だった。


「見ての通り、小綺麗な店じゃないけど、でも味とか量は男子には気に入ってもらえると思うんだ。」


「町中華、いいね。こう言う雰囲気の店が、結構おいしいものを出してくれるって、あるあるだよね。是非、ここにしよう。」


「うん。」


こうして、ふたりは中に入って行った。


「いらっしゃい。おや、久しぶりだね。」


途端に店主とおぼしき男性が声を掛けて来る。


「お久しぶりです、最近ちょっとバタバタしてて・・・。」


「そう言えば、一緒に来てたお嬢さん、引っ越すって言ってたもんなぁ。それで今日は彼氏とかい?」


「いやいや、彼氏なんてとんでもない。バチが当たりますよ。」


慌てる大城に


「そうかい?美男美女のお似合いのカップルだと思うけどな。」


店主はそう言って笑う。ふたりが反応に困ると


「ちょっと、あんた無駄口、叩いてる暇ないだろう。すみませんね、こちらの席にどうぞ。」


女将さんが割って入って、ふたりは席に着く。


「ごめんね。ここには一緒に住んでた友だちとたまに来てたんだけど、女子2人で来るお客は結構珍しいらしくて、顔覚えられちゃって・・・。」


小声で詫びる凪咲に


「僕は全然大丈夫、というか菱見さんの彼氏に間違われるなら、むしろ光栄だよ。」


「大城くん・・・。」


「さ、何を頼もうかな。」


自分の言葉にハッとする凪咲にお構いなく、大城はメニュ-に目をやった。
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