ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「ここのオススメは餃子。」


「いつも食べるの?」


「必ず。」


「じゃ、それにしよう。あとはワンタンメンと半チャ-ハン。」


「さすが男子だね。私は今日は普通のラーメンにしようかな?」


「どうして?餃子、いつも食べるんだろ?」


「そうだけど、でも・・・。」


そう言って、やや俯いた凪咲を、大城は不思議そうに見たが、すぐに


「ひょっとして、僕と一緒だから?」


気が付いたように尋ねる。


「うん・・・やっぱり男性と2人の食事する時に、餃子は・・・。」


匂ったら恥ずかしいし、という言葉を凪咲が紡ごうとすると


「菱見さん。この後、僕とキスでもする気?」


大城が揶揄うように言って来る。


「大城くん・・・。」


「そんな気、全然ないのは、僕をこの店に連れて来た時点でちゃんとわかってるからさ。だから、気にしないで食べてよ。」


そう言って、屈託なく笑う大城に


「ごめんね、ありがとう。じゃ、遠慮なく。」


凪咲はそう答えて、微笑んだ。


出て来た料理に味にも量にも十分満足し、店主夫妻の声に見送られて、店を出た2人。


「美味かったなぁ、ここはまた来たいな。」


「なら、よかった。じゃ、少し歩こうか。」


「そうだね。」


商店街をそのまま歩いて抜け、少し経つと、住宅街が広がり始め、桜並木やイチョウ並木が連なっている様子が目に入って来る。今は時期を外れているが、シーズンには目にも鮮やかな光景が広がることが、容易に想像できる。


その横には、清らかなせせらぎが流れ、その奥では、公園で子供たちが、賑やかな声ではしゃいでいる。


「いいね、ここ。」


思わず大城が、呟くように言った。


「私も結構気に入ってる。私たちが毎日通っているビジネス街とは全然違うもんね。」


頷く凪咲。


「僕、ここに引っ越して来てよかったかも。」


「えっ?」


「そんなに長い間はいるわけじゃないけど・・・その間はきっと、何度も足を運びたくなる。そんな光景だよ。」


感に堪えないという口調で言う大城に


「そう言えば、大城くん、この後の引っ越し先って決まってるの?」


凪咲は尋ねる。


「いや、まだ・・・。」


「だったら、この辺にしたら。ここからなら、通勤もそんなに大変じゃないし。」


その凪咲の言葉に、ハッと彼女の顔を見た大城は


「そうだな、それもありかも、な・・・。」


ポツンと言った。
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