ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
そのまましばらくその光景を楽しみ、語りながら歩いていた2人だったが、やがて帰宅の途に着くべく、商店街に引き返して行った。


いつの間にか、日が西に隠れ始め、商店街は賑わいを増していた。家族連れや夫婦が買い物に現れ、その客を呼び込む威勢のいい声が、あちこちに響いていた。思えば、こう言った光景もあまり、目にすることはなくなって来ているかもしれない。


そんな中を、ふたり肩を並べて歩いていた凪咲と大城だったが


「ちょっと、このお肉屋さん寄ってもいい?」


凪咲が足を止め、ショ-ケ-スに目をやると


「いらっしゃい。」


その後ろから、声が掛かる。そして


「おっ、新婚さんかい?」


と笑顔で言われ


「えっ・・・。」


2人が答えに困っていると


「仲睦まじくていいね。どう?今日はとんかつでも。」


畳み掛けられる。


「確かに美味しそうなお肉・・・。」


「さすが奥さん、お目が高い。安くしとくからさ、どう?」


「でも・・・。」


「いただきます。」


「えっ?」


「この子、肉屋の娘なんで、彼女が美味しそうって言うなら間違いない。じゃ、豚ロース2枚、お願いします。」


戸惑う凪咲を尻目に、大城が注文する。


「そうこなくっちゃ。じゃ、いいとこ、分厚く切っとくから。」


「よろしくお願いします。」


こうして、今夜のおかずが決まったふたり。


「大城くん、いいの?」


「昼間、恋人同士に間違えられたのも驚いたけど、今度は新婚さんだって。僕たちもそう見える年齢なんだね。」


「大城くん・・・。」


「さ、帰ろう。あっ、とんかつは僕が揚げるから、任せといてよ。」


張り切って、歩き始めた大城を、一瞬、凪咲は不思議そうに見たが、すぐに後を追った。


こうして帰宅したふたり。さっそく準備に掛かろうとする大城に


「私も手伝うよ。」


凪咲は言うが


「大丈夫、菱見さんは休んでてよ。」


笑顔の大城は、エプロンを着け、やる気満々。これはお任せした方がいいと察した凪咲は


「じゃ、よろしくお願いします。私は洗濯物を取り込んでから、お風呂の準備しちゃうね。」


そう言い残して、キッチンを離れた。
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