ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
それから少しして、リビングに戻った凪咲の目に、こんがり黄金色に揚がったカツが入って来る。サラダやご飯も既にセッテングが終わっていて


「おいしそう。」


思わず凪咲は笑顔になる。


「我ながらいい具合に揚がったよ。さ、食べよう。」


「うん、ありがとう。」


そして、席に着いた2人。皿のカツには、キチンと包丁が入っており、千切りキャベツが添えてある。


「キャベツ、大城くんがきざんだの?」


「うん。」


「千切り出来るんだ?凄いね。」


「そうかな?じゃ、とりあえず、食べてみてよ。とんかつには当然とんかつソースが王道なんだけど、僕のオススメは塩にレモンなんだ。よかったら、試してみて。」


「大城くんも?実はウチもお父さんが『旨い肉には、絶対に塩だ。』ってお客さんにも奨めてるくらいだから、いつもお塩で。それにレモンをちょっとかけると、さっぱりするんだよね。」


「そうなんだ。こんなところで、話が合うなんて、なんか嬉しいな。」


「そうだね。じゃ、いただきます。」


そう言って、カツを口に運んだ凪咲の顔は、途端に笑顔になった。


「美味しい。」


「本当?嬉しいな。」


「大城くんは料理が上手だね。」


「肉がいいんだよ。」


「ううん。この前、朝ご飯作ってくれた時もそう思った。大城くんの奥さんになる人は幸せだ。」


「ほめ過ぎだよ、菱見さん。」


照れる大城に、凪咲は微笑ましさを覚える。そのまま、和気藹々と夕食を楽しんだふたり。後片付けは、協力してということになったふたりは、キッチンに並んで立った。


「大城くんは、どなたに料理を教わったの?」


「婆ちゃん。」


「そうなんだ。」


「僕の両親は仕事が忙しくてさ。だから家族団らんなんて、ほとんど記憶になくて、小さい頃から祖母が面倒見てくれたから。可愛がってくれたけど、小学校の高学年くらいからは、自分のことは自分でやれるようになりなさいと言われて、それなりにいろいろ仕込まれた。だから、お陰さまで、大学に入って、独り暮らしをするようになってからも、路頭に迷わないで、生きて来られた。」


と言って、大城は笑う。


「そうなんだ。凄いね。」


「そんなことはないけど。でもさ、こないだ菱見さんの実家に行った時、正直羨ましかったよ。」


「えっ?」


「菱見さんにとっては、いろいろ煩いことを言われて、大変なんだろうけど、でもそれだけご両親が、君のことを気に掛けてくれてるってことじゃないか。」


「大城くん・・・。」


その言葉に胸をつかれて、思わず凪咲は大城の顔を見たが、その表情が特に変わることはなかった。
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