ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
翌朝。起床した凪咲がリビングに顔を出すと、大城は既にキッチンにいた。


「おはよう。よかったら、朝食作ったから食べてよ。」


「えっ、そんな・・・いいのに。大城くんばっか、早起きして・・・なんか申し訳ないよ。」


「気にしないでよ、作りたくて作ってるんだから。僕は割と朝からガッツリ食べたいタイプだから。あとさ、弁当も作ったから、よかったら、持って行って。」


「大城くん・・・。」


「僕は研究職だから、なかなか仕事に区切りがつかなくて、昼食時間とかきっちり取れない時があって。だから弁当の方がいいんだ。どうせ作るなら、1人分も2人分も手間は変わらないからね。」


笑顔で話し続ける大城に、凪咲は正直、困った表情になる。それを見て


「2週間ほど一緒にいて、わかってると思うけど、僕も毎日朝食作るわけじゃないし、毎日弁当を作るわけでもない。出来るとき、というか自分がやりたい時、やらなきゃいけない時にしか作らない。ただそれだけだし、菱見さんに善意の押し付けをするつもりもないから、要らなかったら、遠慮なく言って。」


と言う大城に


「押し付けなんて、全然思ってないし、大城くんの料理の腕が確かなのももうわかってるし。本当にありがとうね、ありがたくいただくし、お弁当も持って行かせてもらう。でも、私の為に無理だけは絶対にしないでね、それだけはお願い。」


凪咲はそう言って、頭を下げる。


「はい。」


頷いた大城の笑顔に、思わずドキッとしてしまった凪咲は、なぜか慌てて、視線を逸らした。


その後は例によって、時間差で出勤したふたり。週明けの午前中の慌ただしい時間を過ごし、迎えた昼休み。


開いた弁当は、彩りも鮮やかで味も文句なし、あっという間に完食した凪咲は、スマホを取り出すと、意を決したように1つ頷くと、大城宛にLINEを送った。


『仕事中だったらごめんなさい。お弁当、いただきました。とっても美味しかったです、ありがとうね。ところで今日、帰り何時くらいになりそう?』


朝は昼休憩が不規則だと言っていた大城だったが、返信はすぐに来た。


『お粗末様でした、今日は1時間くらい残業になるかも。どうしたの?』


素早い反応に驚きながら


『じゃ、もしよかったら、お夕飯食べないで、帰って来てくれる?私、作るから。』


と返す。すると


『本当に?いいの?』


驚いたような返答が返って来る。


『大城くんには及ばないだろうけど、夕べからのお礼をさせて下さい。』


『わかりました。では、お言葉に甘えます。飛んで帰ります。』


そのアンサ-を読んだ凪咲は思わず笑顔になり


『はい、お待ちしてます。』


と返した後


(よし。)


内心で気合を入れた。
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