ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
大城が帰宅すると


「お帰り!」


エプロン姿の凪咲が、満面の笑みで、キッチンから声を掛けて来た。その姿に、思わず息を呑んだ様に立ち尽くす大城。


「お仕事、お疲れ様。」


「う、うん・・。菱見さんもお疲れ様。」


「お夕飯、もう出来るから、着換えて来ちゃって。」


「ありがとう。ごめんね、仕事帰りで疲れてるのに。」


「大丈夫。」


そう言って、自室に入った大城は、ドアをバタンと締めた途端


「なんだよ、あれ・・・可愛過ぎて、やばすぎる・・・。」


思わず独り言ちてしまっていた。少し自分を落ち着かせた後、着換えて、ダイニングに大城が戻ると、テーブルには既にサバの味噌煮、肉じゃが、ひじき煮と言った和食メニュ-が並んでいる。


「これ、全部菱見さんが作ったの?」


思わずそう口走った大城に


「男の人は、もっとガッツリ系の方がよかったかもしれないけど、昨日がトンカツだったから、今日は和でまとめてみました。」


やはり笑顔のまま、凪咲は言う。


「そうなんだ、まるで僕の好みを知り尽くしたようなメニュ-だ。」


「ならよかった。後はお口に合うかどうか、だね。取り敢えず、召し上がって下さい。」


「ありがとう、じゃ遠慮なくいただきます。」


と言って、箸を手に取った大城だったが、ハッと気が付いたように


「ごめん、TV消してもいいかな?」


凪咲に尋ねる。


「別に構わないよ。料理してる間、BGM代わりに点けてただけだから。」


そう答えた凪咲は、リモコンでTVのスイッチを切る。


「朝は慌ただしいから、仕方なく時計代わりにTVも点けるけど、せっかくの料理を『ながら』でいただくなんて、作ってくれた人に失礼だし、こうして一緒に食べる人がいる時は、食事はもちろん、その人と一緒にいられる時間を、その人との会話を楽しみたい。偉そうな言い方になっちゃうけど、それが僕の流儀なんだ。だから、一緒に夕飯食べる時は、TVとかはなしにしたいんだ。ごめんね。」


申し訳なさそうに言う大城に


「ううん、素敵な考え方だと思う。」


そう言えば、昨日の夜もTVは点いていなかった、そんなことを思い出しながら、凪咲は首を振った。


「それじゃ、改めて。いただきます!」


「どうぞ、召し上がって下さい。」


大城が箸を自分の口に運ぶのを、凪咲は緊張の面持ちで見た。
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