ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「どう、かな・・・?」


不安そうに尋ねる凪咲に


「美味しい、いや本当に美味しいよ、この肉じゃが。」


大城が満面の笑みで答えるから


「それならよかった。他の物も食べてみてよ。」


ホッとしたように笑顔になった凪咲が言う。


「うん。」


頷いた大城は、次々と料理を口に運び、その都度笑顔になる。そんな彼の様子を見て、凪咲も安心したように、自分も箸を取った。


美味い、美味いを連発しながら、やがて料理を完食した大城は


「菱見さんは僕なんかより、よっぽど料理上手だったんだね。」


感嘆の表情を浮かべて言った。


「ううん、そんなことないよ。でも正直、大城くんは私のこと、料理出来ないと思ってたよね?」


いたずらっぽく尋ねる凪咲に


「ごめん。でも考えてみれば、あのお母さんに料理を教わったはずの君が料理が出来ないとか苦手なはずなかったんだよ。本当、おみそれいたしました。」


大城は素直に頭を下げる。


「昨日のお礼もしたかったし、その誤解だけは解いておきたかったから、今日は頑張っちゃったんだけど、でも昨日も言ったけど、私、本当にガサツでさ。女子力低くて、料理も他の家事も好きじゃないんだ。」


「そっか。」


「それに、好みもあんまり女子っぽくなくて。一緒に住んでた友だちも同じようなタイプだったから、だから気が合って、2人で町中華にも行けたんだけど・・・まぁ、それはともかくとしても、そんなこんなで、私には結婚なんてとても無理だし、まして老舗旅館の女将なんて、無理ゲーもいいところなんだよ。」


そう言って、ため息をついた凪咲に


「だったら、家事好きな相手を見つければ、いいだけのことじゃない?」


あっさりと言ってのける大城。


「えっ?」


「今どき、女性の結婚に『女子力』は必須条件じゃないし、それに、『出来ない』と『好きじゃないからやらない』は全然別の話だよ。」


「大城くん・・・。」


その言葉に、やや驚いたように大城を見た凪咲だったが


「ご馳走様でした。じゃ、チャチャって片付けちゃうね。」


大城の方はまるで、気にする様子もなく、立ち上がると、テーブルの上の食器を片付け始める。


「あ、私も一緒にやるよ。」


それを見た凪咲も、慌てて立ち上がった。
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