ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
そうこうしている内に、ふたりの偽装同居生活は、ひと月、ふた月・・・と過ぎて行き、そんなある日の昼休みのことだった。


「凪咲ってさぁ、最近付き合い悪いよね。」


社員食堂で同期のひとりが、こんなことを言い出した。


「えっ?」


「うん、私も思ってた。」


「そ、そうかな?」


「そうだよ。仕事帰りにご飯誘っても、3回に2回は断るし。」


「3回に2回って・・・そんなことはないよ。」


「そんなことあるって。」


反論を軽く否定され、凪咲は思わず絶句する。


「今日は違うけど、なんかお弁当とか持って来てることあるし。」


「そうそう、あれ誰が作ってるの?」


「それは・・・。」


「自分で、なんて説明は認めないからね。朝が弱くて、いつも時間ギリギリに飛び込んで来る凪咲がお弁当作りとかあり得ないから。」


今度は、言い分を先回りして却下され、凪咲が言葉を失っていると


「なんか怪し~い。」


「そうだね・・・って、そっか!」


「なによ?」


「本当に彼氏出来たね?凪咲。」


「えっ?」


「そっか、じゃその人の為に、頑張って早起きして、お弁当作ってるってことか?」


「いや、逆じゃない?彼氏が凪咲の為にお弁当作ってくれてんだよ。」


「その方がしっくり来るね。」


「どちらにしても、そうなると、もうふたりは同棲してるってことになるよ。」


「キャ~。親に彼氏連れて来いって言われて、頭を抱えてた人が、いきなりどうしちゃったの?ちゃんと説明しなさいよ。」


勝手に盛り上がる同僚たちを


「ちょっと、こんな所で、勝手なことばかり言わないでよ。」


凪咲は慌てて、鎮めにかかるが


「考えてみたらさ、あの時は、私たちのアドバイスに従って、偽彼氏を実家に連れてって、事なきを得たって言ってたけど、それって誰に頼んだのか、結局私たちに教えてくれなかったよね?」


「それは、その時も言ったけど、その人に迷惑掛かっちゃうから・・・。」


「ということは、私たちが知ってる人、つまり会社の人ってことだよね?」


「エ-、誰なの?」


火の手は一向に収まる様子がない。焦った凪咲は


「とにかく彼氏は出来てません。お弁当は、前に一緒に住んでた友だちが何回か仕事の都合で泊まりに来た時、そのお礼に作ってくれただけです。みんなとの付き合いが悪くなったというのは、自分では、そんなつもりは全然なかったけど、ごめんなさい。これから気を付けます。以上です!」


こう言って、同僚たちに頭を下げた。
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