ウソから出たマコト～ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋～

その週の仕事が終わり、帰宅した凪咲は、リビングで大城の帰りを待っていると


「ただいま、どうしたの？」


残業を終え、帰宅して来た大城が驚いたように声を掛けて来た。自分の帰りを凪咲が待ち受けているのは、もう珍しいことではなかったが、彼女がいつもの部屋着ではなく、会社帰りのままの服装だったからだ。


「お帰り。話があって、待ってたんだ。」


「そうなの？改まって、なに？」


そう言いながら、自分の前の椅子に腰掛けた大城を凪咲は真っすぐに見た。


「早いものだね。」


「えっ？」


「もうすぐ３ヶ月だよ、私たちが一緒に暮らし始めて。」


「そ、そっか・・・。」


その凪咲の言葉に、大城はやや動揺したように答える。


「３ヶ月、あっという間だった。楽しかったよ。」


「・・・。」


｢でも、そろそろ終わりにしないと。」


「凪咲・・・。」


「だって、最初から3か月って約束だったし、私の都合で君にこれ以上迷惑掛けられないもん。」


「そ、そんなことはないけどさ・・・。」


ここで言葉が途切れ、重苦しい空気がふたりを包む。予想もしなかったその空気に、凪咲が戸惑っていると


「確かに、いつまでもこの生活を続けてはいられないけど・・・でも、今同居を解消するのは不味いんじゃないかな？」


大城が意外なことを言い出す。


「えっ？」


「だってさ、この間、君のご両親に仲良くやってますアピ－ルをしたばっかりで、それからひと月も経たないで、別れますって、あまりにも不自然じゃない？」


「そ、そっかな・・・？」


「そうだよ！」


戸惑い気味の声を出す凪咲に、なぜか勢い込んで答えた大城は、彼女に驚いたような表情を向けられて


「いや、その・・・実はさ。俺、まだ新しい家、全然探してなくてさ。」


一瞬慌てた後、ややバツ悪そうにこんなことを言い出した。


「えっ？」


「だからその・・・なんだ。勝手言って、本当に申し訳ないんだけど、あと2ヶ月・・・いや1ヶ月でもいいからさ、ここに置いてくれないかな？」


「裕・・・。」


「も、もちろん凪咲が迷惑だったって言うなら、今すぐにでも出て行くよ。荷物だけは、もうちょっと置かせてもらうことになるけど・・・。」


「そんなことないよ！」


今度は凪咲が勢い込んで言うと、大城が驚いて彼女の顔を見る番だ。