ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「め、迷惑なんてそんなわけないじゃん。だってさ、その・・・もともと私が無理言って、君に頼んだ同居じゃない。だから迷惑なんて、絶対に思わないから。思ったらバチが当たる。」


これまたなぜか、慌てたように凪咲が答える。


「そっか・・・じゃ、悪いけど、もう少しだけ居させてもらうよ。なるべく早く、住むとこ見つけるようにするからさ。」


と言った大城に


「別に無理して、探さなくてもいいけど・・・。」


思わず小声で答えてしまった凪咲。


「えっ、何?」


聞き返されて


「ううん、何でもない。じゃ、とりあえずそういうことで、もう少しよろしくね。」


取り繕うように笑顔で答えた。その笑顔を見て


「よし。」


と言葉が漏れてしまった大城。


「なにが『よし』なの?」


凪咲に尋ねられ


「いや、その・・・凪咲は優しいなと思って。」


と答えた大城。


「なにそれ?」


「いや、ハハハ・・・。」


最後は笑って誤魔化した。


こうして、同居延長戦に突入したふたりは、翌日からまた、これまでと同じような時間を過ごし始めた。そう、お互いの食事の用意をし、時には一緒に料理をし、他の家事を分担し、それが終わるとある時は一緒に映画を見たり、ゲームをやったり。休日に一緒に出掛けることも、もはやまれではなくなった。


そんなある日、リビングでまったりとした時間を過ごしていた時のことだった。


「ねぇ?」


「うん?」


「新しいお部屋、見つかった?」


凪咲は唐突に尋ねてみた。一瞬、驚いたように彼女を見た大城は


「いいや、まだ。」


首を振った。


「本気で探してる?」


「探してるよ。」


「じゃ、今度、私、付き合ってあげようか?」


「いいよ、別に一緒に住むわけじゃないんだから。」


大城はブスッとした表情で答え、それを見た凪咲は、内心でホッと胸をなでおろしていた。


だがこの日以降、大城の様子に変化が起きた。何やら物思いに耽る様子が見られるようになったかと思うと、やがて自室に篭もる時間が増えて来た。明らかに凪咲と距離を取ろうとしていた。


(えっ、一体どうしたの?)


予期せぬ事態に凪咲は戸惑った、そして気が付いた。


(誤解させちゃったんだ・・・。)


と。
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