ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
翌日。仕事を終えた凪咲は、大城の帰りを待った。このところ、ほとんど夕食を共にすることがなくなっていて、この日も大城からは遅くなるということは聞いていた。


本当に用事があるのか、それとも距離を置く為なのかは、わからなかったが、思えば3か月前にも同じシチュエ-ションがあった。あの時は、自分から大城に同居にピリオドを打つことを提案する為だったが、今日凪咲が秘めている思いは、その時とは全く逆だった。


(こうなったら、裕の本当の気持ちを確かめてみるしかない。ううん、私が裕に自分の気持ちをぶつけてみればいいんだよ。)


もう残された時間は多くはないのだと、凪咲は覚悟を決めていた。緊張しながら、点けているTVの音は、上の空で耳を通り過ぎて行き、手持ち無沙汰の時間が過ぎて行く。


やがて、ドアが開き、大城が帰って来た。


「お帰り。」


そう言って、立ち上がった凪咲はハッと足を止めた。入って来た大城は、明らかに酔っていた。


「ただいま~、凪咲。」


不自然に大きな声を出して、近寄って来る大城に、凪咲は戸惑う。今まで彼が酒を飲んで帰って来たことは、もちろん何度もあったが、ここまで酔っていたことはなく


「僕、あんまり酒好きじゃないんだよね。」


と言っていた。同期会での彼の様子を思い出しても、その言葉は納得出来たし、家で食事を共にする時も、アルコ-ルを口にすることはなかった。そんな大城が、大事な話をしようとしている時に酔っ払ってるのは、はっきり言って想定外。凪咲が戸惑っていると


「凪咲!」


ガバッと大城が抱き着いて来た。


「凪咲、そんな可愛い格好しててさ。僕を挑発してるの?」


「ちょ、ちょっと、裕、止めて。」


確かに、告白するつもりだったから、仕事着でも部屋着でもない、そのシチュエ-ションにふさわしい私服を身に着けていた凪咲だったが、まさかそれが仇になるなんて・・・。普段の大城からは、想像も出来ない態度に、凪咲は必死になって、彼を突き放そうとしたが


「凪咲、好きだよ。」


彼女を見つめて、そう言った大城は、思わず固まっている凪咲の唇を、躊躇なく奪って来た。


(ちょ、ちょっと・・・。)


本当なら、喜ぶべき彼の言葉も、これでは素直に受け止められるはずもない。凪咲の閉じられない瞳から、涙が零れる。
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