ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
やがて、大城の唇が離れて、ふたりの目が合う。


「なんで泣いてるんだよ?」


「当たり前でしょ、こんなの嫌!酔った勢いで・・・最低だよ、裕!」


解放されない身体をよじりながら、凪咲は大城を睨み付ける。


「僕は確かに今、酔ってるけど、これは酔っ払った勢いでなんかじゃない。」


「えっ?」


「僕の、本心だ。」


そう言って、大城は凪咲を見つめる。その彼の真剣な表情に、息を呑んだ凪咲を、大城はなんと抱き上げた。


「裕・・・。」


「嫌なら、言ってくれ。」


「嫌って言えば、降ろしてくれるの?」


「ああ。」


「だったら、嫌。」


そう言った凪咲に、大城は固まる。


「本気なら明日、酔ってない時にもう1度言って。私、今の裕の言葉は信じられないし、こんな状況であなたと結ばれるなんて嫌。」


そう言って、凪咲は真っすぐに大城を見つめる。数秒の沈黙の後、大城はゆっくりと彼女の身体を、手放した。


「裕・・・。」


「ごめん、おやすみ。」


そう言った大城は、踵を返すと自分の部屋に戻って行った。


翌朝。結局、ほとんど眠れないまま、朝を迎えた凪咲が、彼女にしては早めにリビングに出ると、既に大城は出勤した後のようだった。食卓には朝食の用意がされており、「おはよう、先に行きます。」とのメモが添えてあった。


「おはよう。朝食、ありがとうね。」


ポツンとそう呟いた凪咲は、その朝食をいただくと、身支度を整え、家を出た。


そして、いつものように仕事をこなし、帰宅した凪咲が玄関のドアを開けると、中には灯りはなく、人の気配もなかった。


(まだ帰ってなかったんだ・・・。)


そんなことを考えながら、凪咲はリビングに入ると灯りを点け、取り敢えず椅子に腰かけると、まったりとした時間を少し楽しみ


「よし。」


ひとつ気合を入れて立ち上がった。洗面所に行って、手を洗って、うがいをしたら、またここに戻って、夕飯の準備だ。


(お腹すかして、帰って来るだろうから。)


そんなことを思いながら、凪咲は足取りも軽く、リビングを出る。


思えば彼の為に夕食を作るのは久しぶりのことだ。最初の頃は結構、面倒臭かったのに、なんで今の自分は夕飯作りに心弾ませてるんだろう。


(変なの・・・。)


我ながらそう思ってしまう。
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