ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「もしもし。」


と出た次の瞬間、凪咲はスマホを耳から離す。興奮しきった正美の声が響いて来たからだ。何事かと、懸命に耳を傾けると、どうやら裕から、自分と別れた旨の報告と丁重な詫びの電話が入ったらしい。


(電話入れてくれたんだ、裕らしい・・・。)


そう思いながら


「別に何があったってわけじゃないんだけど、いろいろすれ違いとか、相手に対する違和感とかが積み重なってさ。それでふたりで話し合って、決めたんだ。だから、仕方ないんだよ。私だけが悪いわけでも、彼だけが悪いわけでもないんだから・・・。」


と説明する。すると今度は父親が出て来て、ひとしきり喚き騒いだ後


『大切な娘を疵物にされて、このまま黙っていられるか!』


時代ががったセリフを吐くから


「あのね、疵物って何よ?失礼じゃない。それに何度も言うけど、これはふたりでちゃんと話し合って決めたことなんだから。と言うことでお父さん、今回でつくづくわかった。私って結婚に向いてないみたい・・・まぁそういうわけなんで。ごめんなさい。」


凪咲は、この同居を始めるに当たっての最終目的であった言葉を告げると、尚も興奮している直也に構わず、電話を切った。


「これで、終わったな・・・。」


独り言ちた凪咲は、1つ大きなため息を吐くと、立ち上がった。そう全ては終わったのだ、大城と同じように、自分もまた新たな歩みを始めなければならないのだ。


そう思い定めて、明日の出勤の準備の為に凪咲が部屋に戻って、少しすると、再びスマホが騒ぎ出した。誰かと思えば、今度は勉から。興奮冷めやらぬ両親が、別居している兄に訴えたんだろうとなと思いながら、電話に出るとまさしくその通りで、事情を知ってる勉には、正直な経緯を話した。


『そうか・・・。』


ポツンと呟くように言った勉は


『まさか、ふたりとも本気だったとはな・・・。』


とため息交じりで続けた。


『凪咲はなんで大城くんに偽彼氏役を頼んだんだ?』


「えっ・・・?」


『普通、好意を持ってない男に、そんなこと頼まないだろ?そして、彼も凪咲の無茶な頼みを引き受けたのは、お前のことが嫌いじゃないからに違いない。要はそういうことだ。』


「おにい・・。」


『だから、結局お前たちは、最後は本当に結ばれるに違いない。俺はそう思ったから、お前たちの同居に反対しなかったんだ。それがまさか、本当に偽のままで終わらせるなんて・・・。』


呆れとも嘆きともつかない兄の言葉を聞いた瞬間、凪咲の目から、涙が溢れ出していた。
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