ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
(確かに言われてみれば・・・。)
営業事務は、ただ事務仕事、書類作成をしているだけではない。電話応対もあるし、時には営業担当に代わって、取引先の応対をすることもある。英語はダメだが、それがなしなら、まんざらやれなくもないか・・・という気持ちが少しもたげて来た凪咲だったが、実はもう1つ、重大な懸念があった。
「でも、受付嬢はキレイな人じゃないとなれないんじゃないでしょうか?」
「は?」
「こんなことを言うのもなんですが、よく顔採用が当たり前だって聞きますし。」
「・・・。」
「だとしたら、私はとても・・・。」
最後は消え入りそうな声でそう言った凪咲を、コーディネ-タ-は少し見ていたが、やがて
「菱見さんは随分、ご自分に自信がないんですね。」
と穏やかな口調で言った。
「えっ?」
「受付嬢が顔採用されてるかどうかは、私にはわかりません。ひょっとしたら、そういう企業様もあるかもしれませんが、私の認識では、顔立ちとかよりは、清潔感や上品さ、そしてその人が醸し出す雰囲気を基準に採用していると思ってます。」
「はぁ・・・。」
「それに。」
「はい。」
「もし顔採用だとしても、菱見さんなら、なんの問題もないと私は思いますけど。」
「えっ?」
「今どき、こんなことを言うとまずいのかもしれませんが、私みたいなおばさんが言うのなら、まぁ問題ないでしょう。」
と言って笑うコーディネ-タ-に
「か、からかわないで下さい。」
顔を真っ赤にして、凪咲は俯いていた。
そんなやり取りはあったが
「まずは面談に行かれたらどうですか?それで合わないと思えば、別の職場をまたご紹介しますから。」
というコ-ディネ-タ-の強い勧めで、凪咲は紹介された企業AOYAMAを彼女と共に訪れた。AOYAMAでは、受付嬢は秘書課に属している。秘書課長自らに案内され、職場を見学し、実際の業務の様子を確認させてもらった後、凪咲は面談に臨んだ。
「企業受付はその会社の顔と言って、差し支えありません。笑顔でご来訪者をお迎えして、やりとりを行うコミュニケーション能力は必須ですし、丁寧かつ適切な対応をするために、高いビジネスマナーや接遇スキルが求められます。その点、菱見さんは大塚ケミカルズさんで、営業事務をされていましたし、今日お目に掛かって、これまでお話しさせていただいた様子を見る限り、その点は全く問題ないと思います。」
秘書課長は、そう言って、穏やかな笑みを浮かべた。
(この人の下でなら、やっていけるかもしれない・・・。)
課長のその言葉と暖かな笑みが、前職場でいろいろあり、転職活動もうまくいかず、ささくれ立っていた心をすぅっと穏やかにしてくれたことを、凪咲は昨日のことのように覚えている。
営業事務は、ただ事務仕事、書類作成をしているだけではない。電話応対もあるし、時には営業担当に代わって、取引先の応対をすることもある。英語はダメだが、それがなしなら、まんざらやれなくもないか・・・という気持ちが少しもたげて来た凪咲だったが、実はもう1つ、重大な懸念があった。
「でも、受付嬢はキレイな人じゃないとなれないんじゃないでしょうか?」
「は?」
「こんなことを言うのもなんですが、よく顔採用が当たり前だって聞きますし。」
「・・・。」
「だとしたら、私はとても・・・。」
最後は消え入りそうな声でそう言った凪咲を、コーディネ-タ-は少し見ていたが、やがて
「菱見さんは随分、ご自分に自信がないんですね。」
と穏やかな口調で言った。
「えっ?」
「受付嬢が顔採用されてるかどうかは、私にはわかりません。ひょっとしたら、そういう企業様もあるかもしれませんが、私の認識では、顔立ちとかよりは、清潔感や上品さ、そしてその人が醸し出す雰囲気を基準に採用していると思ってます。」
「はぁ・・・。」
「それに。」
「はい。」
「もし顔採用だとしても、菱見さんなら、なんの問題もないと私は思いますけど。」
「えっ?」
「今どき、こんなことを言うとまずいのかもしれませんが、私みたいなおばさんが言うのなら、まぁ問題ないでしょう。」
と言って笑うコーディネ-タ-に
「か、からかわないで下さい。」
顔を真っ赤にして、凪咲は俯いていた。
そんなやり取りはあったが
「まずは面談に行かれたらどうですか?それで合わないと思えば、別の職場をまたご紹介しますから。」
というコ-ディネ-タ-の強い勧めで、凪咲は紹介された企業AOYAMAを彼女と共に訪れた。AOYAMAでは、受付嬢は秘書課に属している。秘書課長自らに案内され、職場を見学し、実際の業務の様子を確認させてもらった後、凪咲は面談に臨んだ。
「企業受付はその会社の顔と言って、差し支えありません。笑顔でご来訪者をお迎えして、やりとりを行うコミュニケーション能力は必須ですし、丁寧かつ適切な対応をするために、高いビジネスマナーや接遇スキルが求められます。その点、菱見さんは大塚ケミカルズさんで、営業事務をされていましたし、今日お目に掛かって、これまでお話しさせていただいた様子を見る限り、その点は全く問題ないと思います。」
秘書課長は、そう言って、穏やかな笑みを浮かべた。
(この人の下でなら、やっていけるかもしれない・・・。)
課長のその言葉と暖かな笑みが、前職場でいろいろあり、転職活動もうまくいかず、ささくれ立っていた心をすぅっと穏やかにしてくれたことを、凪咲は昨日のことのように覚えている。