ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
間もなく、午後の来客ピークタイムとなり、3人の受付嬢たちは、慌ただしい時間を過ごしていたが、16時を過ぎるとそれも一段落して、彼女たちはパソコンに向かい、必要な入力業務や日報作成を始める。もちろん、来客が全く途絶えるわけではないし、電話も鳴り、メール処理、会議室の清掃や翌日の為のセッティングと、まだまだ息を抜ける状況ではない。


そんなところへ


「ただいま、戻りました。」


と元気な声が、外回りから戻って来た営業部の早川雅弘だ。


「あっ、早川さん、お疲れ様です。」


3人の受付嬢の中では、早川と一番親しい千晶が、笑顔で迎える。


「ありがとう、千晶ちゃん。その笑顔を見ると、営業の疲れも吹っ飛ぶってもんだよ。」


「そうですか?なら嬉しいですけど。」


「千晶ちゃんは明るくて、素直でいいよな。その点・・・。」


「その点、なに?」


すかさず貴恵が、ギロリと睨んできて


「べ、別にお前に何にも言ってないよ。なぁ菱見さん。」


思わず首をすくめた早川が、凪咲に助けを求める。


「えっ、ま、まぁ・・・。」


突然話を振られた凪咲が、曖昧な返事をしていると


「なんか、楽しそうですね。」


後ろから声が聞こえて来た、裕だ。


「ジュニア。」


「え、ジュニア。」


千晶の口にした名前を聞いて、思わず固まった早川を尻目に


「参ったなぁ。すっかりジュニアが僕の呼び名として、定着しちゃってて。僕にも一応新城裕っていう名前があるんですから、新城とか裕って呼んで下さいよ。」


苦笑いの裕。


「そ、そんな滅相もない。おこがましくて、とてもそんな呼び方は・・・。」


固まったまま、そんなことを口走った早川を見て


「君は?」


裕が問い掛ける。


「入社6年目、営業部所属の早川雅弘です。以後、お見知りおきいただければ。」


直立不動のまま、答える早川。


「入社6年目って、いうことは桜内さんと同期?」


「そうですね、残念ながら。」


問われた貴恵が、素っ気なくそう答えると


「桜内、残念ながらって、どういう意味だよ?」


憤然と早川が嚙み付くが


「その通りの意味だけど。」


あっさりと返され、絶句してしまう。
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