ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
⑭
翌日は、何事もなく過ぎて行き、凪咲たちは通常通り、業務をこなしていた。
「今日はジュニア、来ませんねぇ。」
人の波が途絶え、その日の勤務が終わりに近付いて来た頃、千晶が残念そうに言い出す。今朝、裕が出勤してきた際には、挨拶だけでブースを通りすぎて行った。
「あんなのにウザ絡みされなくて、せいせいするじゃない。」
「そうですか?あんなカッコよくて、イケメンの御曹司なんですよ。この際、お近付きになりたいじゃないですか?」
「全く今の若い子は、男を見る目がないというか、肩書とか出自に騙されやすいと言うか・・・。」
「チ-フ、今の若い子はって言いましたね?それは自分がオバサンだって、認めたことになりますよ。」
「そうよ、私はアラサ-のおばさん。ちゃんと自覚してるけど、何か?」
「あ、開き直った。」
「あ~、うるさい。とにかくね、男はね、外見じゃないよ、中身、ハートだよ。ね、菱見さん。」
「えっ?ま、まぁそうですね・・・。」
千晶と貴恵のやり合いをよそに、黙々とパソコンに向かっていた凪咲は、突然話を振られて、慌てて答えたあと
「そう言えば、例の業務改善委員会ってどうなったんですか?確か新城さんが帰って来られたら、正式に動き出すみたいなお話しだったような気がするんですが。」
思い立ったように、貴恵に尋ねるが
「さぁ?特になんか動きがあったとは聞いてないな。あの男も帰国してまだ3日だし、バタバタしててそれどころじゃないんでしょ。どっちにしたって、あんな軽薄な男になんか、ブ-スに指一本触れさせないから。絶対に。」
貴恵は冷たく言い放つと
「じゃ私、会議室の最終チェックに行って来るから。2人も日報が終わり次第、クロ-ジングに入って。」
指示を残して、貴恵はブースを離れて行く。コイコツという彼女の足音が徐々に遠ざかって行くのを、聞きながら
「ジュニアのこと、『あんなの』『あの男』呼ばわりですからね。よっぽど、チ-フはジュニアのことが気に食わないんですね。」
千晶はやや呆れ気味の声で言う。
「昨日は新城さんのこと、『敵』って、言い切ってたからね。」
「そうなんですか・・・それで、凪咲さんもそう思ってます?」
「えっ?」
「ジュニアのこと、敵だと思ってます?」
「千晶ちゃん・・・。」
一瞬、間が空いた後
「前とイメ-ジが違ってて、戸惑ってるのは事実だけど、別に敵とは思ってないな。」
そんな答えをした凪咲の顔を、千晶は少し見つめていたが
「わかりました。じゃ、私もクロ-ジングに入ります。」
と言って、立ち上がった。
「今日はジュニア、来ませんねぇ。」
人の波が途絶え、その日の勤務が終わりに近付いて来た頃、千晶が残念そうに言い出す。今朝、裕が出勤してきた際には、挨拶だけでブースを通りすぎて行った。
「あんなのにウザ絡みされなくて、せいせいするじゃない。」
「そうですか?あんなカッコよくて、イケメンの御曹司なんですよ。この際、お近付きになりたいじゃないですか?」
「全く今の若い子は、男を見る目がないというか、肩書とか出自に騙されやすいと言うか・・・。」
「チ-フ、今の若い子はって言いましたね?それは自分がオバサンだって、認めたことになりますよ。」
「そうよ、私はアラサ-のおばさん。ちゃんと自覚してるけど、何か?」
「あ、開き直った。」
「あ~、うるさい。とにかくね、男はね、外見じゃないよ、中身、ハートだよ。ね、菱見さん。」
「えっ?ま、まぁそうですね・・・。」
千晶と貴恵のやり合いをよそに、黙々とパソコンに向かっていた凪咲は、突然話を振られて、慌てて答えたあと
「そう言えば、例の業務改善委員会ってどうなったんですか?確か新城さんが帰って来られたら、正式に動き出すみたいなお話しだったような気がするんですが。」
思い立ったように、貴恵に尋ねるが
「さぁ?特になんか動きがあったとは聞いてないな。あの男も帰国してまだ3日だし、バタバタしててそれどころじゃないんでしょ。どっちにしたって、あんな軽薄な男になんか、ブ-スに指一本触れさせないから。絶対に。」
貴恵は冷たく言い放つと
「じゃ私、会議室の最終チェックに行って来るから。2人も日報が終わり次第、クロ-ジングに入って。」
指示を残して、貴恵はブースを離れて行く。コイコツという彼女の足音が徐々に遠ざかって行くのを、聞きながら
「ジュニアのこと、『あんなの』『あの男』呼ばわりですからね。よっぽど、チ-フはジュニアのことが気に食わないんですね。」
千晶はやや呆れ気味の声で言う。
「昨日は新城さんのこと、『敵』って、言い切ってたからね。」
「そうなんですか・・・それで、凪咲さんもそう思ってます?」
「えっ?」
「ジュニアのこと、敵だと思ってます?」
「千晶ちゃん・・・。」
一瞬、間が空いた後
「前とイメ-ジが違ってて、戸惑ってるのは事実だけど、別に敵とは思ってないな。」
そんな答えをした凪咲の顔を、千晶は少し見つめていたが
「わかりました。じゃ、私もクロ-ジングに入ります。」
と言って、立ち上がった。