ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
裕の発案で企画された懇親会は、参加希望者が予想以上で、結局3回に分けて開催されたほどであった。
「せっかく自分の会社の御曹司とお近づきになれるかもしれないのに、それを見逃す手はないですよね。」
という千晶の言葉が、実証された形になった。実際、自ら幹事を買って出て、3回皆勤を果たした早川のようなツワモノもいた。会自体は盛況で、裕は参加者の中に飛び込んで、彼らと親交を深めたと言う。
「ジュニアと実際に話しましたけど、親しみやすくて、話しやすかったですし、場をいろいろ盛り上げて下さって・・・だから、結構ファンになった子も多いですよ。」
参加した翌朝、千晶が興奮気味に報告して来るのを
(昔の裕は、呑み会の席や同期の集まりでも、おとなしくて目立たなかった。あの頃の自分は猫を被っていたという彼の言葉はやっぱり本当だったんだってことだよね・・・。)
などと思いながら、凪咲は聞いていた。
それはそれでよかったのだが、問題はその後の裕の行動だった。一応一室を与えられたものの、肩書もなく、父である社長から、担当する業務を言い渡された様子もなく、暇を持て余したのか、社内をブラブラと徘徊し始めたのだ。
各部署を回っては、相手の状況お構いなく、話し掛ける。相手が御曹司だから、社員たちも邪険には出来ないが、その内容が業務に関することならともかく、雑談、バカ話としか受け取れないことが少なくなかった。
「とにかく、あの男、今のところ、会社に来て、実際にやってることと言ったら、なんか社内をうろついて、親しくなった女子社員に話し掛けては、バカ話してるだけらしいじゃない。みんな呆れかえってるよ。」
貴恵は、凪咲にそう言って嘆いた。
出退勤時や休憩時間には、そんな彼女たちを連れ歩いていて、既にその中の何人かとは、懇ろの仲になっているとか、いないとか、そんな噂も立っていた。
「この間、来社された取引先の人から、あの人たちは何者なんですかって聞かれてさ。顔から火が出そうになったよ。」
「会社にナンパしに来てるのかよ。」
「ホント、どうにかなんないの?」
裕シンパの一部社員を除くと、彼の評判は悪くなる一方で
「でも新城さんの様子は、当然社長のお耳にも入っているはずです。なのに、社長は彼に何もおっしゃらないんでしょうか?」
派遣社員だからか、遠慮がちにではあったが、ついに堪りかねて凪咲は貴恵に尋ねてしまった。
「せっかく自分の会社の御曹司とお近づきになれるかもしれないのに、それを見逃す手はないですよね。」
という千晶の言葉が、実証された形になった。実際、自ら幹事を買って出て、3回皆勤を果たした早川のようなツワモノもいた。会自体は盛況で、裕は参加者の中に飛び込んで、彼らと親交を深めたと言う。
「ジュニアと実際に話しましたけど、親しみやすくて、話しやすかったですし、場をいろいろ盛り上げて下さって・・・だから、結構ファンになった子も多いですよ。」
参加した翌朝、千晶が興奮気味に報告して来るのを
(昔の裕は、呑み会の席や同期の集まりでも、おとなしくて目立たなかった。あの頃の自分は猫を被っていたという彼の言葉はやっぱり本当だったんだってことだよね・・・。)
などと思いながら、凪咲は聞いていた。
それはそれでよかったのだが、問題はその後の裕の行動だった。一応一室を与えられたものの、肩書もなく、父である社長から、担当する業務を言い渡された様子もなく、暇を持て余したのか、社内をブラブラと徘徊し始めたのだ。
各部署を回っては、相手の状況お構いなく、話し掛ける。相手が御曹司だから、社員たちも邪険には出来ないが、その内容が業務に関することならともかく、雑談、バカ話としか受け取れないことが少なくなかった。
「とにかく、あの男、今のところ、会社に来て、実際にやってることと言ったら、なんか社内をうろついて、親しくなった女子社員に話し掛けては、バカ話してるだけらしいじゃない。みんな呆れかえってるよ。」
貴恵は、凪咲にそう言って嘆いた。
出退勤時や休憩時間には、そんな彼女たちを連れ歩いていて、既にその中の何人かとは、懇ろの仲になっているとか、いないとか、そんな噂も立っていた。
「この間、来社された取引先の人から、あの人たちは何者なんですかって聞かれてさ。顔から火が出そうになったよ。」
「会社にナンパしに来てるのかよ。」
「ホント、どうにかなんないの?」
裕シンパの一部社員を除くと、彼の評判は悪くなる一方で
「でも新城さんの様子は、当然社長のお耳にも入っているはずです。なのに、社長は彼に何もおっしゃらないんでしょうか?」
派遣社員だからか、遠慮がちにではあったが、ついに堪りかねて凪咲は貴恵に尋ねてしまった。