ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「さぁ?でもあのボンクラ御曹司のお陰で業務改善委員会なんて、すっかり絵に描いた餅になっちゃったみたいよ。」
「えっ?」
「お陰で、栗木常務あたりは地団駄踏んでるらしいけど、いい気味よ。これで私たちの職場は安泰ってこと。そこはあの男に感謝しないとね。」
そう言って、貴恵は皮肉気な笑みを浮かべたものだ。
夕飯を食べ終えた凪咲は、そんなこんなの光景を思い出しながら、思わずため息を吐いた。
(裕・・・。)
本人が言っているのだから、しょうがないのだが、それにしても、今の裕は、あまりにもかつての彼の姿とは違っている。凪咲が裕と以前からの知り合いであることは、既に社内では知れ渡っており
「あの人、昔からあんな感じだったの?」
と何人もの社員たちから聞かれたが
「いえ。」
と首を振るしかなかった。
(裕はあんなちゃらい、いい加減そうな男じゃなかった。私の知ってる彼は、真面目で、優しくて。そして仕事に誠実に取り組む人だった。だから私は、彼のことを・・・。)
自分の心の中の言葉なのに、凪咲はその先を呑み込んでしまう。千晶は
「おふたりはジュニアのことを誤解されてます。あの人は、仕事の話もちゃんとされてます。」
と自分と貴恵に対して、彼を庇うけど、申し訳ないが、そんな彼女の言葉はとてもじゃないけど、受け入れることが出来なかった。
(こんなことなら、裕と再会なんかしたくなかった・・・。)
フッとまた1つため息を吐いた凪咲だったが、次の瞬間、テーブルの上に置いてあったスマホが揺れ出した。画面を見て、着信者を確認した凪咲は
「もしもし。おにい、久しぶり。」
と兄、勉からの電話に出た。
『ああ、元気でやってるか?』
「うん、まぁまぁ元気でやってるよ。それで、どうしたの。なんかあった?」
滅多に掛かって来ない兄からの電話に、やや構えながら凪咲は尋ねる。
『お前、今度の週末あたり、1回帰って来られないか?』
「どうして?」
『親父の体調があんまりよくないんだよ。』
「えっ?」
兄の言葉に、凪咲は息を呑む。
『別に入院とかそんな話じゃないんだが、親父も齢だからな。ここんところ、店も休みがちなんだ。』
「そうなんだ・・・。」
あの父が店を休むというのは、相当なことだと凪咲は思わざるを得ない。
『それで、お前の顔を見せてやれば、少しは元気が出るんじゃないかと思ってな。』
「私の顔なんて見たら、かえってお父さんの血圧が上がっちゃって、まずいんじゃないの?」
『そんなことはない。口ではいろいろ言っても、父親にとって娘というのは、やっぱり特別な存在だからな。』
「そっか・・・。」
勉の言葉に、凪咲は頷いていた。
「えっ?」
「お陰で、栗木常務あたりは地団駄踏んでるらしいけど、いい気味よ。これで私たちの職場は安泰ってこと。そこはあの男に感謝しないとね。」
そう言って、貴恵は皮肉気な笑みを浮かべたものだ。
夕飯を食べ終えた凪咲は、そんなこんなの光景を思い出しながら、思わずため息を吐いた。
(裕・・・。)
本人が言っているのだから、しょうがないのだが、それにしても、今の裕は、あまりにもかつての彼の姿とは違っている。凪咲が裕と以前からの知り合いであることは、既に社内では知れ渡っており
「あの人、昔からあんな感じだったの?」
と何人もの社員たちから聞かれたが
「いえ。」
と首を振るしかなかった。
(裕はあんなちゃらい、いい加減そうな男じゃなかった。私の知ってる彼は、真面目で、優しくて。そして仕事に誠実に取り組む人だった。だから私は、彼のことを・・・。)
自分の心の中の言葉なのに、凪咲はその先を呑み込んでしまう。千晶は
「おふたりはジュニアのことを誤解されてます。あの人は、仕事の話もちゃんとされてます。」
と自分と貴恵に対して、彼を庇うけど、申し訳ないが、そんな彼女の言葉はとてもじゃないけど、受け入れることが出来なかった。
(こんなことなら、裕と再会なんかしたくなかった・・・。)
フッとまた1つため息を吐いた凪咲だったが、次の瞬間、テーブルの上に置いてあったスマホが揺れ出した。画面を見て、着信者を確認した凪咲は
「もしもし。おにい、久しぶり。」
と兄、勉からの電話に出た。
『ああ、元気でやってるか?』
「うん、まぁまぁ元気でやってるよ。それで、どうしたの。なんかあった?」
滅多に掛かって来ない兄からの電話に、やや構えながら凪咲は尋ねる。
『お前、今度の週末あたり、1回帰って来られないか?』
「どうして?」
『親父の体調があんまりよくないんだよ。』
「えっ?」
兄の言葉に、凪咲は息を呑む。
『別に入院とかそんな話じゃないんだが、親父も齢だからな。ここんところ、店も休みがちなんだ。』
「そうなんだ・・・。」
あの父が店を休むというのは、相当なことだと凪咲は思わざるを得ない。
『それで、お前の顔を見せてやれば、少しは元気が出るんじゃないかと思ってな。』
「私の顔なんて見たら、かえってお父さんの血圧が上がっちゃって、まずいんじゃないの?」
『そんなことはない。口ではいろいろ言っても、父親にとって娘というのは、やっぱり特別な存在だからな。』
「そっか・・・。」
勉の言葉に、凪咲は頷いていた。