ウソから出たマコト~ニセモノの愛から生まれたホンモノの恋~
「そっか、菱見さんは今、受付嬢なんだ。」


「うん。」


「なんか・・・いいな。」


「えっ?」


「仕事先で菱見さんに『いらっしゃいませ、今日もご苦労さまです。』なんて笑顔で迎えてもらったら、滅茶苦茶テンション上がるような気がする。」


「廣田くん・・・。」


「ごめん。今どき、こういう男目線の発言は、嫌がられるよね。」


「別にそのくらいは大丈夫だよ。」


こんな感じで、思ったより話が弾んだ2人は、食事を終えると、改めて向かい合った。


「今日は本当に時間をもらっちゃってごめん。それにいい年した大人がファミレスなんて・・・どうせなら、もっとちゃんとした場所を用意しろって話だよね。」


「ううん。久しぶりにここに来られて、私は嬉しかった。充希や他の友だちと、何度通ったかわからないもん。」


「そうだよね。僕らの時代はもちろん、ここは今でもウチの高校の生徒の御用達だそうだから。」


「そうなんだ。」


そう言って、笑顔を交わし合った2人だったが


「それに菱見さんと再会するなら、僕はここがよかったんだ。ここは、菱見さんとの思い出の場所だから。」


「思い出?」


「そう、僕の一方的なね。」


そう言って、廣田は照れ臭そうな表情を見せる。


「僕たち、高2の時、文化祭の実行委員、一緒にやったよね。」


「うん。」


「その時、実行委員の連中と1回だけ、ここに来たんだよ。」


「そうだったっけ?」


「各学年、クラスの委員が集まった最初の時で、親睦を深めようと、委員会が終わったあと、みんなでここにご飯食べに来たんだ。」


「あ、そうだったね。」


「その時の菱見さんは、みんなに気を遣って、注文を纏めたり、なかなか話に加われずにいる奴らに話し掛けて、みんなの輪に引き込んだりしてくれてた。」


「そうだったかなぁ?」


「君の笑顔が、仲間をひとつしていくのをまざまざと感じてたよ。それに料理が来てから、君の食べ方が本当に上品というか、綺麗でさ。」


「そんなことないよ・・・。」


照れる凪咲に


「そんな君を見て、僕は君への気持ちをはっきり自覚したんだ。」


廣田は告げる。


「えっ。」


「君が小さい頃、お父さんと一緒にウチの旅館に来てたのも、覚えてるよ。あんまり話とかはしなかったけど、可愛い子だなって、思ってた。」


「廣田くん・・・。」
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