きみの色


私服の柳はやはりいつもと違って大人な雰囲気で、かっこよくて、少し緊張してしまう。


私の前を通り過ぎると、ふわりと石鹸みたいな香水が鼻をくすぐった。


柳の匂いだ。




「また絵、描き始めたのか?」



パレットに出してあった絵の具が新しいのに気がついたのか、柳がきいた。



「うん、やっぱり絵を描くが好きみたい」



そう言うと、柳は目を細める。



「…あなたのことを描いたのが、ずいぶん昔みたいだね」



あの時私は彼に向かって泣き喚いて、怒ってたっけ。

思い返すとちょっと恥ずかしい。



「あぁ、世界で1番きれいだって褒めてくれた」



イタズラっぽく笑われる。



「だって…ほんとのことだもん」



「アンタも負けないくらい魅力的だと思うけど?」



「えー?私?ないよ、ないない」



目は吊り目だし、見た目も普通だし、
スタイルだって平凡中の平凡だ。


自慢できるのは母譲りの長い髪だけ。



「俺の周りもアンタのこと可愛いとか美人とか言ってる人、いるけど」



「はあ?誰よそれ」



「あさひ」



あさひくん。
あの、小型犬のようなあさひくん。

嬉しいけど、きっと見間違いの誰かだよ。



「……ありがとう。けど、そんなことないと思うけどなぁ…」



「どうしてそんなこと言うんだ?俺が保証してる」


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