パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
この人のことが好き。
ほんとうに好き。大好きだ。
目の前にいるこの彼が、
あの阿久津沢のキングと呼ばれるこの彼が
なんでもない私のことを好きだなんて。
嘘みたい。
私だけが知っている柳の顔。
目を細めて笑う顔。
全部、私のものだなんて。
「柳、楽しんでるでしょ…」
「あぁ、だめか?」
上目遣いでそう言われて、反抗の一つもできなかった。
叶わない。
この美しすぎる、優しさに溢れたこの人の前では無力だ。
そしてとうとう私はギブアップして、柳の方に倒れるようにして体制を崩した。
「もうやめて…恥ずかしくてしんじゃう」
「これで死なれちゃ困る」
「まだ全然触れてない」といった彼の目が本気なのか冗談なのか私には見抜けない。
しばらく睨みつけると「今日のところはやめておくか」といった顔で、やっと私を解放してくれた。
「それで?ばーちゃんと会う約束はしたのか?」
狭いキッチンで仲良くお茶を淹れて、といってもコンビニで買ったただのティーパックだけど
小さなダイニングテーブルで向かい合って飲みながら、柳は聞いてきた。
「うん。来週末に会うことになったよ。
…それにしても、合わせたい人がいるって、いったい誰だろう?」
「ばーちゃんからは何も聞いてないけど、そこまでして会わせたいって人なら、いい人なんじゃないか?アンタにとって」
私にとって、いい人…?
「まぁ、その日になればわかる」と、柳はゆっくりお茶を飲んだ。
そうして、私はおばあちゃんが何を考えてるのか深く考えずに、約束の日を迎えた。