パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
「妻の弘美です」と、お茶を運んできた、柳のおばあちゃんと背格好が似ている女性も紹介してくれる二階堂先生。
奥様はふふ、と微笑んで会釈するとおぼんを手に部屋を出ていった。
「ねぇ葉月ちゃん、二階堂さんに絵を習ってみない?」
柳のおばあちゃんが、私の目を見て言った。
思っても見なかった提案に、「えっ?」という声が出る。
「君が前通っていた塾の先生よりも教え下手かもしれないが…君がよければ、の話だよ」
「無理強いはしていないからね」と、柔らかい口調で話す。
私なんかが…と口にしてしまいそうになった。
けれど、本当に 私なんかがこんなに恵まれたご縁をいただいていいのだろうか?
塾を辞めてもうかなり経つ。
これからどうしようと、ずっと悩んでいた。
でも父には頼りたくない。
父の私への態度に話すたび腹が立つのに、また父から見放されるのが怖くて塾を辞めたことも自分からは伝えていなかった。
「垣原さんから葉月ちゃんが最近塾をを辞めたと聞いたんでね。
私も最近1人で絵を描くのに飽きてしまって。
教えれることは少ないかもしれないが…」
驚いてしまって、うまく返せない。
いますぐ、はいと言いたいのに
少しの劣等感と、急に現れた奇跡みたいな出来事を受けいられない気持ちがそれを邪魔する。
それを見かねた二階堂先生が、ゆっくりと膝をつきながら立ち上がった。