パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-


週に2回。
二階堂先生のあのアトリエで絵を描く、私の新しい生活が始まった。


初めて訪れた時と同じようにやさしく出迎えられる、二階堂先生宅初日。


塾へ持って行っていた道具そのままを片手に、二階堂先生の後をついていくと、先日より少し片付けた様子のアトリエへ。


小さな椅子を、私用にと用意してくれていた。



窓から差し込む日差しが膝下を照らし、ぽかぽかとして気持ちがいい。


そして二階堂先生が歩くたびにコツコツと鳴る、杖の音が心地よかった。



何をすればいいのかわからずに待っていると、すみの木製デスクに腰を下ろした二階堂先生が、にこりと笑ってこちらを見た。



「君が描きたいものは何?少し、教えてくれないか」



二階堂先生が口にしたのは、今まで散々言われてきた言葉だった。


私は俯いて


「描きたいものが、わからなくて」


と正直な気持ちを伝える。



「うーんそうだねぇ」と、顎に手をあてながら数秒固る。


すると、「じゃあ」と口を開き


「何色が好き?暖色?寒色?」


と、極めてシンプルな質問を投げかけてきた。




「…色…。どちらも好きですけど、…寒色のほうがすき、かも」



思い返せば、私が自分で描く絵は
不思議と寒色が多いのかもしれない。


部屋に飾っている青い絵を思い出す。



あの、青色が大好きだからかもしれない。



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