パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
暗がりの中で彼に目をやると、形のいい喉仏を、汗か血なのかよくわからないものが伝っていくのが見えた。
足音が遠ざかって行くのを確認してからしばらくして、私たちは隙間から元の道へと出る。
そこにはさっきの奴らの姿はなく、シンとしたいつもの見覚えある近所の道だった。
「消えたか」
あー、しんど。と、美しい男は長い腕を空に向けて伸びをする。
横にあった自動販売機に照らされたその顔を私は改めて見た。
やはりこの間の男で間違いない。
そしてその赤の量にぎょっとする。
この前みた鼻血に加えて、こめかみからも血が出ているように見えた。
現在進行形で流れる血が、その美しくて白い首を伝ってシャツにシミを作っている。
え、大丈夫?
思わず心配になるほどだ。
本人は猫のように伸びをしていて、元気そうには見えるけれど。
「巻き込んで悪かった。平気?」
「う、うん…大丈夫」
大丈夫じゃなさそうなのは、どう見てもこの人だ。
夜道に血だらけの男と2人きり。
すぐ手を伸ばせばそこに、あの彫刻のような顔がある。
またしても血だらけだけど、やはりそれは美しくて、私の心拍数を上げていく。
傷口に触れた自身の手が赤いのに気づいたのか、男はうんざりとして眉根を寄せてこう言った。
「アンタ、血止めれるもの持ってるか?」