きみの色

「いいね。じゃあ今日は寒色を使って好きに描けばいい。
ただ、絵の具を置くだけでもいい、線を引くだけでもいい。なんでもいいよ」



ただ、絵の具を置くだけ?



「無理何か描こうとしなくていい。筆や、鉛筆、クレヨン。どんな画材でもいいからとにかく手を動かすことだけできればそれでいいんだ」


手を動かすこと。
それでいい。


私に課せられたのはそれだけ。

無理に何かをうまく描こうとする今までの癖が、きっと私には染み付いていて
それが筆を重くする原因だった。


だから、二階堂先生の言葉は
私の肩を手を、軽くするような
そんな言葉だった。


言われた通りに自分が好きな色を、パレットにとりあえず出してみる。

青、水色紫、それに白。


順番も何も気にせずに、筆にとり、自由に線を描いてみた。


ぐるぐる、まっすぐ、なみなみ



描き始めた私を横目に、二階堂先生は
デスクの上にあったものを片付け整理を始める。


ずっと監視されるような環境で描いてきた私にとってそれは、とてもありがたかった。


真っ白な髪の上でいろんな色が混ざり合っていく。



青と紫が混ざってグラデーションがかった線画がいくつもできていく。

< 110 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop