パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
▽
片付けてもない部屋に男の人をあげたのははじめてだ。
ましてやはじめて部屋にあげた男がこんなに血だらけなんて。
家が近いから手当する、という理由でこの男を家に入れてしまったわけだけど、本音はもう少しこの美しい顔を見ていたいという下心だった。
男の背が私よりもずっと高いせいで、私の暮らす狭い部屋に入った途端、なんだかさらに部屋が小さくなったように感じる。
見せかけだけのダイニングチェアに男を座らせると、私は急いでタオルと救急箱を用意した。
救急箱なんて、家族が勝手に家に置いていったもので、私使ったことないけど。
私の部屋には、ガラクタみたいなベッドと、ダイニングチェアと、勉強道具すら乗り切らない小さなテーブルがある。
そして部屋の大半を絵を描くスペースとして使用していた。
男の額に、濡れたタオルを押し付ける。
男の膝の間に立ち、私はなるべく力を入れないように、そっと額の血を擦った。
痛くないのか彼の表情には変化がない。
男は大人しく私の方へ顎を持ち上げ、その美しい顔を無防備に見せた。
「痛くない?」
「……あぁ。」
歯切れの悪い返事を無視して、私はゆっくりと血を拭ってゆく。
こめかみあたりが切れていて、そこから血が溢れているみたいだ。
「病院に行った方がいいと思うけど」
私が聞くと、男は「すぐ治る」と、またもや曖昧な返事をしてくる。
あれだけ記憶に残っていたこの顔を、こんな近くで見ることができるなんて。
彼の額の血を拭いながら、まじまじとその顔を観察した。
整った眉毛に綺麗な鼻筋、そして毛穴一つ見えない陶器みたいな肌。
形のいい唇の端は切れて血が滲んでいる。
彼をの事を、ただ美しいと一言で終わらせてしまうのが惜しいくらい。
完璧な配置で完璧なパーツが並べられたみたいな、そんな感じ。
嫉妬してしまうほどの美しさ。
骨の形から美しく、バランスの取れた顔なのがよくわかる。
本当に、石膏像みたい。
これ以上血で前髪が汚れないように、と
そっと手でよけている髪の毛すらやわらかくて綺麗だった。
お互いにさっき初めて言葉を交わしたというのに、なぜか私は彼を躊躇いもなく手当していて、彼はそれを大人しく受けている。
長いまつ毛が、私が手を動かすたびに少し揺れる。
あぁ、なんて綺麗。
片付けてもない部屋に男の人をあげたのははじめてだ。
ましてやはじめて部屋にあげた男がこんなに血だらけなんて。
家が近いから手当する、という理由でこの男を家に入れてしまったわけだけど、本音はもう少しこの美しい顔を見ていたいという下心だった。
男の背が私よりもずっと高いせいで、私の暮らす狭い部屋に入った途端、なんだかさらに部屋が小さくなったように感じる。
見せかけだけのダイニングチェアに男を座らせると、私は急いでタオルと救急箱を用意した。
救急箱なんて、家族が勝手に家に置いていったもので、私使ったことないけど。
私の部屋には、ガラクタみたいなベッドと、ダイニングチェアと、勉強道具すら乗り切らない小さなテーブルがある。
そして部屋の大半を絵を描くスペースとして使用していた。
男の額に、濡れたタオルを押し付ける。
男の膝の間に立ち、私はなるべく力を入れないように、そっと額の血を擦った。
痛くないのか彼の表情には変化がない。
男は大人しく私の方へ顎を持ち上げ、その美しい顔を無防備に見せた。
「痛くない?」
「……あぁ。」
歯切れの悪い返事を無視して、私はゆっくりと血を拭ってゆく。
こめかみあたりが切れていて、そこから血が溢れているみたいだ。
「病院に行った方がいいと思うけど」
私が聞くと、男は「すぐ治る」と、またもや曖昧な返事をしてくる。
あれだけ記憶に残っていたこの顔を、こんな近くで見ることができるなんて。
彼の額の血を拭いながら、まじまじとその顔を観察した。
整った眉毛に綺麗な鼻筋、そして毛穴一つ見えない陶器みたいな肌。
形のいい唇の端は切れて血が滲んでいる。
彼をの事を、ただ美しいと一言で終わらせてしまうのが惜しいくらい。
完璧な配置で完璧なパーツが並べられたみたいな、そんな感じ。
嫉妬してしまうほどの美しさ。
骨の形から美しく、バランスの取れた顔なのがよくわかる。
本当に、石膏像みたい。
これ以上血で前髪が汚れないように、と
そっと手でよけている髪の毛すらやわらかくて綺麗だった。
お互いにさっき初めて言葉を交わしたというのに、なぜか私は彼を躊躇いもなく手当していて、彼はそれを大人しく受けている。
長いまつ毛が、私が手を動かすたびに少し揺れる。
あぁ、なんて綺麗。