きみの色





錆びた鉄板で囲まれたがらんどうに、オレンジの灯りがポツポツとついている。

扉を開けるとギィィ、と耳障りな音がその広い空間に鳴り響いた。



廃墟の中心、いくつも置いてある鉄の塊が
そこだけを避けるようにして空間を作っている。


十人ほど、グレーのブレザーを着た男たちがその中心に集まっていた。



カツ、カツ…と歩くたびに足音が鳴り響き、やがてその中心部に辿り着く。

鋭い視線が一斉にこちらを見た。



床には点々とした血の跡が残っている。

これはこの前の阿久津沢の人々にやられた時のものだろうか。


いや、阿久津沢の人々、というよりも
阿久津沢たった1人の男という表現の方が正しい。


ドラム缶に背をもたれるようにして、男たちの中心にいた男がこちらを見た。


治りかけの顔の傷が、痛々しく顔を染めている。



「何しに来た」



笹倉が低い声で言った。



「見事だね?その怪我。柳にやられたの?」



可哀想に、と僕は呟く。



「おしゃべりしに来たんだったら帰れや。今俺は機嫌が悪りぃんだよ」



笹倉を囲んでいる下っ端は、手すら出してこないものの、その睨みを効かせた瞳はしっかりとこちらを捉えていた。

彼らもまた、顔や体に傷を負っている、そんな様子だ。


笹倉の合図ひとつで、僕に飛びかかってくるだろう。
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