きみの色
「お喋りなんてしにきたと思う?君、つまんないもん」
「あ?んだとテメェ」
彼の顔の血管がきゅっと動く。
本当にすぐ頭に血が上るところ…変わってなくて面白いなぁ。
「柳にやられっぱなしでいいんだ?天塚の頭がそれで泣いちゃうね」
笹倉の隣にいたタッパのある頭を丸めた男が、ジリジリとこちらに迫ってきた。
「さっさと本題を言えっつってんだろ」
と、笹倉が煙草の煙をゆっくりと燻らせる。
「はい。まずはコレ。君たちにお土産」
ポケットからキャンディの入ったビニール袋をポトリと床に投げた。
「けっこう上物だよ。君が好きに使ってくれて構わない」
笹倉はぴくりとも動かず、煙草をふかしたまま、こちらから視線を外さない。
「今日は笹倉クンに、いいことを教えてあげようと思って」
「良いこと?」
食いついた。
僕は口角を挙げて笑みを作る。
「柳に女ができた。それもただの学生まがいの子。どう?良いネタでしょ」
「…どういう意味だ」
「君たち、阿久津沢に仕返しを企んでるんでしょ?」
ほんと懲りないねえと、心の中でつぶやく。
まぁ、この笹倉という男はそういう奴だ。
彼を形取っているのは、金と、地位と、そして高層ビル並みに高い自分のプライドだけ。