きみの色





「そう、そしたら、大学で美術方面の論文を書いてるって人に出会ってね。今度話を聞けることになったの」



『そうか。良かったな』



鈴木さんと送ってもらう別れ際に次会う予定を決めた後、ちょっとした嬉しさのあまり、そのまま柳へと電話をしてしまっていた。


だって、なんだか少しワクワクしてるんだもん。



久しぶりに聞いた柳の声が、相変わらず優しそうなのを確認して安心する。



「アルバイトに、二階堂先生の家に…図書館だなんて。なんだか今までにないくらいに忙しくなってきちゃったな…」



電話の向こうで、柳が口元を緩めて笑ったのが分かった。



「だから、しばらく予定がパンパンで会えないかも」



「時間がある時はなるべく電話するね」と、申し訳なさを滲ませて言う。



『大丈夫だ。ちょうどうちも、ややこしい事になっていて忙しい』


「何かあったの?」



「いや…」と、一瞬口籠った柳だが、その後息をついてからゆっくりと理由を述べた。



『天塚っていう高校、覚えてるか?アンタに絡んでた』


「うん」



もう3ヶ月前のことだ。

なんだか遠い昔のように感じる。

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