きみの色
▽
「そう、そしたら、大学で美術方面の論文を書いてるって人に出会ってね。今度話を聞けることになったの」
『そうか。良かったな』
鈴木さんと送ってもらう別れ際に次会う予定を決めた後、ちょっとした嬉しさのあまり、そのまま柳へと電話をしてしまっていた。
だって、なんだか少しワクワクしてるんだもん。
久しぶりに聞いた柳の声が、相変わらず優しそうなのを確認して安心する。
「アルバイトに、二階堂先生の家に…図書館だなんて。なんだか今までにないくらいに忙しくなってきちゃったな…」
電話の向こうで、柳が口元を緩めて笑ったのが分かった。
「だから、しばらく予定がパンパンで会えないかも」
「時間がある時はなるべく電話するね」と、申し訳なさを滲ませて言う。
『大丈夫だ。ちょうどうちも、ややこしい事になっていて忙しい』
「何かあったの?」
「いや…」と、一瞬口籠った柳だが、その後息をついてからゆっくりと理由を述べた。
『天塚っていう高校、覚えてるか?アンタに絡んでた』
「うん」
もう3ヶ月前のことだ。
なんだか遠い昔のように感じる。