パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
ふたりが、柳を囲んでいた3人目掛けて走っていく。
そして、柳を追いかけようとしているところを止めに体を割り込んだ。
おそらく、柳に加勢しにきたのだろう。
柳には劣るが、共に並外れた強さだった。
由井くんはパワーがあって、あさひくんはとても素早い。
二人がいつも柳の隣にいることが、目の前で繰り広げられる動きから理解できた。
「お前、いい加減あきらめたら?」
柳がすっと目を細めて、鉄剤の上に尻餅をついている笹倉に、目線を合わせるようしゃがんで言った。
「これだけ血だらけになったんだ。満足だろ」
柳の冷え切った声が笹倉にふりかかる。
柳の言葉通りに、彼は血だらけだった。
「んだとテメェ!」
笹倉が叫んだのも束の間、また柳はそれを遮るようにして彼の顔を殴る。
さっきまでの天塚の優勢は一転して、覆ってしまった。
私は地面に伏せたまま、焦る笹倉の顔を眺める。
「俺の敗北がお望みなら、いくらでもお前に付き合ってやるよ」
「ほら、立てよ」と淡々と柳は告げた。
柳の姿は、言葉とは裏腹にボロボロ。
先ほど数人に袋叩きにされたようなもの。
どこにそんな力が残っているのだろう。
血だらけ、傷だらけでも尚、彼はキングのまま。
笹倉の胸ぐらを掴み、低い声で挑発する様からは恐ろしさすら感じ取れた。
「女を出しにするような奴が、佐百合に勝てるわけねえだろ」と、由井くんが横から入る。
どうやら、笹倉の手下をあさひくんと2人で倒してしまったみたいだ。
もう、天塚に勝ち目は殆どないだろう。