パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
もうこんな事やめとけと、笹倉に由井くんが吐き捨てる。
「今後、天塚はうちに一切関わるな。ここで誓え」
柳が低い声で言った。
そして、「もし嫌なら今ここで勝負を決めよう」と、微笑む。
その笑顔に、わなわなと笹倉は震えはじめた。
その震えが怒りからなのか、畏れからなのかはわからない。
笹倉の目つきが一瞬変化したのに気がついた私は、彼の素早い動きを見逃さなかった。
先ほど私の髪の毛にあてがっていたナイフを、またぎゅっと握り直し、柳に向かって振りおろしたのだ。
「柳!」
反射的に叫ぶ。
その場にいた笹倉以外の全員に、一瞬にして緊張感が走った。
そして、スパッと刃先が掠めたのは柳の腕。
掠めた刃先の道を辿るように、赤い線が浮かび上がる。
柳の咄嗟の判断がなければ、刃は体に当たっていただろう。
真っ赤な血が、どくどくと腕の傷口から溢れ出した。
腕をつたって、ポタポタと垂れる。
「何すんの?」
柳の声はいつもと変わらない声だった。
表情も何一つ変化が見られない。
今、腕を切られたばかりだと言うのに。
痛がるそぶりも、何もない。
その場にいた柳以外の全員が、彼が纏っていた怒りのオーラに圧倒されていた。
「血が…」
あさひくんが、震える声で呟いた。
ポタポタと、とめどなく流れる赤。
その流れ落ちた血が、腕をつたって、笹倉の顔にぽたりと落ちた。