パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
あたたかそうな血液が、笹倉の顔に落ちてゆく。
笹倉は声も出さずに、柳の顔をじっと見つめている。
その顔は、恐怖に怯えているように見えた。
「はい、そこまで」と、由井くんがぱちんと手を叩くと、張り詰めていた空気が緩んだ気がした。
「あさひ、みんな連れて帰って」と、指示を出されたあさひくんは、心配そうな顔を向けながらもその場をあとに倉庫から出て行った。
「笹倉、お前もわかっただろ。コイツこういう所イカれてんの」
由井くんが笹倉の顔を見下ろしながら言う。
笹倉の顔には、べっとりと柳の血が付いていた。
「だから、な?誓えよ。天塚はもう、うちに関わりませんって」
視線は柳の瞳を捉えたまま、笹倉は怯えたような目で、ゆっくりと頷いた。
「よし、はい解散」と、柳の背中をぽんと由井くんが叩く。
その瞬間、ふ と柳の纏っていた空気が柔らかくなるのがわかった。
そして、柳は目を細めてから笹倉を一瞥すると、ゆっくりと私のもとへとやってきた。
手に持っている笹倉のナイフで、私の手を縛っていたテープを切り落とし、倒れこんだ上体を起こしてくれる。
「立てるか?」
「うん…」
いつも通りの柳だった。
「柳、腕…。血が…」
まだ、止まっていない。
シャツを赤く染め上げてしまっている。
それなのに柳は「平気だ」と、答えた。
「帰ろう」
何も言えない私に、柳は優しくそう言った。
視界の奥に、項垂れた笹倉が見える。
私は、柳の言葉に返事をするように彼の手を取った。