パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
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連れられてきた倉庫をあとにし、私達はすぐさま『orchid』へ戻った。
と言っても、柳は病院へ直行。
出血が止まらず、鉄パイプで殴られたところも赤黒く腫れていたからだ。
顔色は至って普通の様子だったけれど、体はひどい状態だったようだ。
由井くんが無理やり病院まで連れて行ってくれた。
当たり前だ。
あんなふうに、複数人に囲まれて無事なわけがない。
『orchid』へ戻ると、崩れかけたビルの一階部分にカラーコーンが置かれ、立ち入りが規制されていた。
警察や消防が来て対応してくれた跡が見られる。
「葉月ちゃん!…良かった…」
店へ入ると蘭子さんが抱きついてきた。
体がぶつかった衝撃で頭に痛みが走る。
さっき殴られたところや、体のあちこちが痛い。
そしてしばらく確かめるように私をぎゅっと抱きしめると、私たちがいない間のことをきちんと説明してくれた。
「いった!蘭子さん、痛いっす」
「我慢しなさいよ」
私の怪我を手当し終えた蘭子さんは、由井くんあさひくん二人を椅子に座らせ、同時に手当てを始めた。
消毒液をつけられたあさひくんが、思い切り顔を顰めて痛みに耐えている。
これが日常茶飯事なのだろうか。
蘭子さんが持ってきた救急箱は、随分と使い込まれていた。
「しばらく喧嘩は無しだからね!」と、べちんと由井くんのほっぺに絆創膏を貼る。
「ちょ、もっと優しくしろって!」
「はいはい。あとは自分でしなさい」
温かいコーヒーを飲みながら、手当されるがままの彼らを眺める。
柳、大丈夫かな…。
大丈夫なわけ、ないよね。
病院に行ったっきり、彼から連絡はない。
「佐百合、まだ帰ってこないね。連絡ナシ?」
蘭子さんが扉の方を見やり、息をつくように言った。