パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
あさひくんが自慢げに喧嘩の話をし始め、私はテーブルの上に載っていたポテトをつまんで食べる。
由井くんは興味がなさそうな顔で相槌をうち、柳はというと席を立ちトイレへと消えていった。
「ちょっと聞いてますか?葉月さん」
あさひくんが顰めっ面で私を睨みつけたのとほぼ同時に、お店のドアベルが鳴る。
「すみません…まだ営業じゃな…ー」
蘭子さんが断りを入れたにも関わらず、そのお客さんはぐいっと店内に入り込んできた。
背が高くてスーツを着た若い男の人。
髪の毛は整髪剤でしっかりとまとめられ、着ているスーツは三つ揃えで、見るからに上質そう。
すらりと背が高くて落ち着いた印象で、切れ長の瞳が凛とした印象を与えている。
ん…、この人…
男の人は店内をじっと見廻し、困った様子の蘭子さんに「失礼」と小さな声で頭を下げた。
ガチャリと、扉が開く音がしてトイレから柳が出てくる。
やっぱり…似ている…
「いい加減に家に顔を出したらどうだ、佐百合」
見知らぬ男の人は、柳の名前を確かに呼んでそう言った。
彼もまた、男の人の存在に気がついたようで、綺麗な瞳をすっと細めた。
彼が何かを考えている時の癖だ。
「…どうして、ここに…」
柳の方から小さな声が漏れた。
「父からの伝言を伝えにきた、わざわざな。お前が全く連絡に応えないからだ」
冷ややかな声でそう言った男の人に対し、柳は「ふうん。…それはどうも」と抑揚のない声で答える。
「頼むから父からの連絡はこれ以上無視するな。俺が面倒ごとに巻き込まれるハメになる」
男の人が呆れたように息を吐いた。
「家に顔を出すか電話に出るかしないと、無理矢理連れて帰らせる、だそうだ。返事しろよ」
柳は答えない。
黙ったまま、早く帰れとでも言うように男の人を見つめている。
「佐百合…知り合い…?あの、よかったら座って話を…」