パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
黒い前髪の隙間で、柳とは対照的な黒い瞳が細められる。
鈴木さんはゆったりとしたリネンの黒いシャツに、細めの黒いパンツを合わせている。
頭からつま先まで黒で統一されていて少し目立つけれど、それはすらりとした体躯によく似合っている。
鈴木さんと会うのは、彼が目の前で倒れたのを看病した時以来だ。
「この前、大丈夫でしたか…?」
「うん、この間は迷惑かけてごめんね…ありがとう。おかげさまで元気だよ」
やさしげに唇を動かした鈴木さんの視線が私の手元に移動し、持っていた本で止まる。
「その本…」
「小さい頃読んだことがあって、好きな本だったんです。…さっきたまたま見つけちゃって」
「そうなんだ。…それ、僕も読んだことがある」
するりと私の手元から本を奪った鈴木さんは、懐かしそうにページをめくった。
「そうなんですか?」と、ここに仲間がいたことへの嬉しさから出たトーンの高い声に、鈴木さんはチラリとこちらを見て微笑んだ。
「…その荊棘の魔王、私の知ってる人に似てるんですよね。…だからなんだか面白くて」
頭に柳のことをもう一度思い浮かべる。
「へぇ」とページをめくりながら、彼は小さな声で相槌をうった。
「…それで言うと、鈴木さんはこの王子様に似ているような…」
「王子様?」
「荊棘の魔王に攫われた姫を助ける、この王子様」
トン、と指先で王子の挿絵を指さす。
「誠実で、みんなから慕われていて、それでいて…姫を助けるヒーロー」
爽やかで、穏やかで、優しげな鈴木さんにぴったりだと思った。