パーフェクトブルー -甘くて眩しいきみの色-
この感情は







鼻の奥がツンとする香りに挨拶をして、誰もいない教室に駆け込む。



まだ授業開始時間より1時間以上も前を指す時計の針の音が、カチッカチッと、がらんとしたこの世界に響いていた。


そこら中に置かれている木の椅子。

静かに息を潜めている石膏像。

洗いかけの筆。

あちこちを向いたイーゼル。


私はその中から「鷹宮 葉月(たかみや はづき)」と名前シールが隅に貼られているものを手に取って動かす。


そして、もうすでに何度も描いたことのある像の前に寄せた。



床と木材が擦れる音が、妙にうるさく感じる。



バッグから取り出した大きい缶に何本も入っている中から長さのある鉛筆を取り出し、カッターで芯をゆっくりと削ってゆくと、その削りカスが音を立てずにあらかじめ設置しておいたゴミ箱に落ちていく。



「池田美術スクール」



古びた看板、古びたビルの3階にあるこの画塾は、美術大学を志す学生が通う画塾だ。


この画塾に通い続けてもう4年になる。


その間、1番早くきてスケッチ練習をするのが、
私のルール。

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