きみの色
「白い髪ぃー?」
「うん、白っぽい銀色?かな…」
「こういう髪型の…」と言って、阿久津沢の彼の髪型を指で表現してみせた。
目にかかる、少し長めの白い髪。
染めているであろうというのに、ふわりとして柔らかそうだった。
「……なに、もしかして、鷹宮の好きな人?」
「その顔やめてよ。…違うよ、別にそういうんじゃ…ない」
ニヤニヤとこちらを覗き込む野田を手で押し返す。
彼のことが好きとか、そんなこと考えもしなかったから野田のその言葉に戸惑う。
彼のことが気になっているだけだ。
「鷹宮も恋とかするんだな〜、ふーん」
「だから違うってば」
「睨むなよ。別に普通だろ恋のひとつやふたつ」
何も言い返さない私を見て察したのか、野田は目を丸くして嘘だろという表情でこちらを見てきた。
「え、まじ?もしかして鷹宮今まで恋愛したことないの?」
「こればっかりだったからそんな暇ないよ」
"これ"と、鉛筆を何度か叩く。
私の18年間、(もうすぐ19になるけど)
絵を描くことが全てだった。
恋をする余裕なんてなかった。
普通じゃないのはわかってる。
阿久津沢の彼のことが気になるこの気持ちが、恋かどうか、私にはわからない。
「鷹宮美人だしモテそうなのに。ちょっと無愛想だけど」
「もううるさいな。黙ってゲームでもしてなよ」
「まぁ初めて選ぶ相手が阿久津沢とは大したもんだな。あんまりおすすめはできないわ。悪い奴しかいないらしいし」
悪い奴という言葉が引っかかる。
野田が言っていた通り、阿久津沢は本当に喧嘩や危険なことに巻き込まれる危ない高校なのかもしれない。
だけど、あの美しい彼が
悪人だとは私には思えなかった。