きみの色
「おつかれー野田」と教室に生徒が数人入ってきた。
話は必然的に途切れ、しばらくして授業の合図がなった。
「今日は面談をやるから。順番に呼ぶから職員ルームに来るように」
担任に呼ばれ、1人ずつ隣の教室兼担任の職員ルームになっている部屋に消えてゆく。
終わったものから帰宅できるようで、時間が経つにつれて教室にいた生徒のほとんどがいなくなっていた。
私の番は最後だったらしく、面談が始まる頃には塾がある階はしんと静まり返っていた。
「じゃあ鷹宮は引き続き日美でいくと」
「まぁ、はい」
自分の答えかもわからないまま頷く。
「…野田が一つ下の大学目指してるようだけど」
担任にそう言われ何も言い返せずに窓の外を見た。
その言葉の意味はきっとこうだ。
私より上手い野田ですら日美を目指していないのに、一度落ちた君がもう一度日美に挑戦?と遠回しに言っているに違いない。
そんなこと、言われなくてもわかっている。
惨めな気持ちになりながらも、顔色を変えないよう努める。
私に才能さえあれば、こんなおじさんにこんなふうに言われずに済むのに。
悔しい。
「わかってます。すみません、頑張ります」
じろりとこちらに視線を向けられる。
「君は静物画は上手くかけてるけどねぇ。他の自由に描くものはあんまりねぇ」
うぅむ、と面倒そうな声をあげながら、ペンでメモを叩く。
コツコツコツと不規則なリズムで何度も叩く音は、だんだんと耳障りな音に変わっていった。