きみの色
「鷹宮は何が描きたいのか伝わってこないからねぇ。何が描きたいの?君は」
何も言葉が出てこない。
手のひらに嫌な汗が滲み始めた。
何か言い返してやりたいのに、何もいうことができない自分に苛つく。
図星だったからだ。
「まぁ、いい。鷹宮の自由だからねぇ、これは」
担任は何も答えない私を見かねて話を切り上げた。
立ち上がり、私に近づく。
肩に担任の手が置かれて、何度かそのまま揉まれるようにして触られる。
じっとりとした感触が伝わってきて気持ちが悪い。
「今日はこれで終わりだから帰りなさい。…最近暑くなってきたのに髪は切らないの?長くて邪魔そうに見えるなぁ」
さら、と私の肩にかかっていた髪を担任が触った。
明らかにおかしい距離感に、私の体は嫌悪感でいっぱいになる。
気持ち悪さのあまり私は思わず身を捩って担任の手を跳ね除けた。
「はは、冗談なのに」と、嫌な笑みを浮かべる担任にいても経ってもいられなくなり、私は立ち上がり「帰ります」とだけ言って急いで荷物をまとめる。
背中に担任の視線を感じたまま、なるべく早足で教室を出た。
気持ち悪くて吐きそう。
教室を出るとほぼ走った状態で階段を駆け降り、塾が入っているビルを飛び出した。